「離婚するかどうかくらい、私たち二人で決めさせてください」離婚を止めようと集まった親戚。だが、お嫁さんが静かに返した一言
結婚のときも、親戚が集まった
息子の結婚が決まったとき、私は座敷の上座で挨拶をした。
私の家では昔から、結婚の話を当人だけで進めず、親戚が集まって話をする。
私自身もその中で結婚した人間なので、順番が来ただけだと思っていた。
あの日は、相手の家のことも少し調べたほうがいいのではないか、という声が二度ほど上がり、用意された紙が親戚の間を回った。
最後まで目を通した一人が、紙を置きながら言った。
「まあ、ここまで見たなら十分じゃないか。私は別に問題ないと思うよ」
「そうだな。本人たちが決めたことだしな」
そんな言葉が続き、その日はそれで話が終わった。私はようやく肩の荷が下りたような気がした。
二度目に人が集まったのは、それから二年後だった。
息子夫婦の間がうまくいっていないらしい、という話が親戚の間にも伝わり、気づけばまた同じ座敷に座布団が並んでいた。
障子を閉めてから数えると、親戚は10人いた。
「二年で離婚っていうのは、ちょっと早くないか」
「もう少し様子を見たらどうだ。今すぐ決めなくてもいいだろう」
「夫婦なら、ぶつかることくらいあるよ」
責めているつもりではないのだろう。みんな、できれば丸く収めたいという顔をしていた。
それでも言葉が重なるほど、私はだんだん居心地が悪くなった。
末席では、お嫁さんがずっと膝の上で指を組んでいた。
しばらく黙っていた彼女が、ようやく顔を上げた。
「すみません。ひとつだけ、言ってもいいですか」
その声で、座敷の話が止まった。
彼女は一度息をついてから、静かに続けた。
「離婚するかどうかくらい、私たち二人で決めさせてください」
声を荒らげたわけではなかった。
それなのに、その一言だけは妙にはっきり耳に残った。
親戚の一人が困ったように眉を寄せた。
「でもなあ…うちは昔から、こういうことはみんなで話してきたからな」
「それは分かっています」
彼女は小さくうなずいた。
「皆さんが心配してくださっているのも分かります。でも、私たちがどうしたいのかを聞かれる前に、離婚するなって言われるのは……少し違うと思うんです」
最後のほうは、少し声が震えていた。
誰も、すぐには言葉を返せなかった
座敷が静かになった。
誰かが咳払いをしたが、そのあとに言葉は続かなかった。
やがて上座にいた最年長の親戚が、湯呑みを置いた。
「…まあ、そう言われるとな」
しばらく畳を見つめてから、ゆっくり顔を上げた。
「昔からこうしてきたから、今回もそうするものだと思ってた。けど、確かに二人の話だな」
別の親戚が、「でも、心配はするぞ」と言った。
すると最年長の親戚は苦笑した。
「心配するのと、代わりに決めるのは別だろう」
その言葉に、強く反対する人はいなかった。
結局、その日は離婚する、しないという結論を親戚の前で出すことはなく、二人で話すことになった。
帰り際、玄関で靴を履いていると、親戚の一人が私の横で小さく息を吐いた。
「……あれは、言われても仕方なかったな」
私は少し迷ってから答えた。
「うん。私も、あの場でそう思ったよ」
それから、結婚でも離婚でも、あの座敷に10人が集まることはなくなった。
息子夫婦は自分たちで何度も話し、時間をかけて結論を出した。
後日、お嫁さんから電話があった。
「この前のこと、二人でちゃんと話しました」
「そうか」
私はそれ以上、何が正しいとも言わなかった。
少し間を置いてから、彼女が言った。
「私たちで決めました」
「うん。それなら、それでいいと思う」
電話を切ったあと、私はあの座敷のことを思い出していた。
昔から続いてきたからといって、それを次の世代にもそのまま渡さなければならないわけではない。
あの日の一言で、ようやくそれに気づいた気がした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














