「毎月3万、必ず返しに来るから」子供の頃、黙って使われた私の貯金。だが、兄が抱えていた本音とは
知らないうちに使われていた
四人兄弟の末っ子として育った私には、子どもの頃、自分名義の口座があったそうです。
もらったお年玉や祝いを、親が少しずつ預けてくれていたものでした。
小学生だった当時の私は、その存在すら知りません。
二番目の兄が県外の大学へ進むとき、学費が足りなくなったことがありました。
二十数年前のことです。長男の兄も工面したうえで、母が足りない分を、私の口座からも黙って回していたのだといいます。
その事実を私が知ったのは、ずっとあとになってからでした。
すでに大人になっていた私に、母が打ち明けたのです。
小学生の貯金にまで手をつけていたと聞いて、さすがに言葉に詰まりました。
それでも、当時の家計を思えば、母を責める気にはなれませんでした。
兄からの申し出
その頃、二番目の兄とは、暮らす土地も離れて、めったに会いませんでした。
お金のことも、こちらから切り出すことはないまま、何年も過ぎていきます。
二年ほど前、久しぶりに会った兄が、改まった様子で言いました。
「毎月3万、必ず返しに来るから」
使ったお金を、そのままにはできない。ずっと気にかけていた、と兄は言います。
私は、もう気にしていないと伝えましたが、兄は引きませんでした。
「金額の問題じゃないんだ。けじめをつけさせてくれ」
「そこまでしなくても、と思ったよ。でも、兄貴がそう決めたなら」
結局、私が折れる形になりました。何を言っても、兄の目はまっすぐで、揺らぐ気配がありません。あの進学のことを、ずっと胸の奥に抱えていたのだと、その一点で伝わってきました。
今も続く3万円
それから兄は、言葉のとおり、毎月3万円を返しに来ています。振り込みで済ませることもできたはずです。それでも兄は、必ず自分で顔を出しました。
「今月のぶん。……ついでに、茶でも飲ませてくれ」
玄関先で封筒を渡すと、そのまま上がって、しばらく話していきます。子どもの頃のこと、あの進学のときの家の様子。会うたびに、途切れていた時間が少しずつ埋まっていきました。
完済まで、あと二年ほどです。正直に言えば、返ってくる3万円より、毎月律儀に足を運んでくれる兄の本音のほうが、私にはずっと大きいものでした。
黙って使われたわだかまりは、いつのまにか、この人は信じられるという気持ちに変わっていたのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














