「何も言われなかったので甘えていました」夜10時の花火を注意した翌朝、隣人が玄関で告げたこと
がまんしてきた工事の音
最初は、庭の竹を砕く機械の音だった。
それが終わると、今度はどこからか運ばれてきた重機が、朝から地面を掘り返しはじめた。
コンクリートが流され、大きな倉庫が建ち、やっと終わったと思ったら、また重機がやって来た。
お隣の工事は、そうして1年以上続いた。それでも昼間のことだからと、私は一度も文句を言わなかった。
そんなある夏の夜、隣の庭でバーベキューが始まった。夜9時ごろになると花火の音まで加わり、子どもたちのはしゃぐ声が閉めた窓越しにも聞こえてきた。
「重機の音が1年以上続いて、今度は夜の花火か…」
思わずこぼすと、夫が苦笑いした。
「まあ、夏休みだし。もう少ししたら終わるんじゃない?」
「そうだといいけど。子どもも寝てるしね」
夜10時ごろになると、いったん外は静かになった。やっと終わったのだと思い、私も布団に入った。
ところが眠りかけたころ、突然、パンッという大きな音が響いた。
私は驚いて飛び起きた。心臓が激しく打ち、しばらく布団の上から動けなかった。
玄関に立っていた二人
さすがにこれ以上は困ると思い、私は窓を開けて隣の庭に声をかけた。
「すみません。もう10時を過ぎています。子どもも寝ていますので、今夜はここまでにしていただけませんか」
それまで聞こえていた笑い声が止まった。
ご主人がこちらを見て、小さく頭を下げた。家族もそのまま花火をやめ、片づけを始めた。
翌朝、玄関のチャイムが鳴った。
ドアを開けると、40代くらいのご主人と奥さんが立っていた。奥さんの手には、包装紙に包まれた菓子折りがあった。
「昨夜は、本当にすみませんでした」
ご主人は深く頭を下げた。
「工事も長かったですし……ずっとご迷惑でしたよね。何も言われなかったので、つい甘えてしまって」
そう言って、もう一度頭を下げた。隣で奥さんも頭を下げ、菓子折りを両手で差し出した。
「子どもたちにも昨夜、話しました」
「ありがとうございます。そうしていただけると助かります」
私が菓子折りを受け取ると、二人はほっとしたように顔を見合わせた。
玄関先の話し声に気づいた夫も奥から出てきて、私の後ろで静かにうなずいていた。
「では、失礼します」
その夏、隣の庭で花火をする日はあっても、夜8時を過ぎることはなかった。
ある晩、窓の外からご主人の声が聞こえてきた。
「よし、もうすぐ8時だ。これで最後にしよう」
子どもたちの返事が聞こえ、ほどなくして庭は静かになった。
長く続いた工事のことまで謝られるとは思っていなかっただけに、翌朝の二人の姿は今でもよく覚えている。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














