「遅れるのは、当たり前だろ」母をバイクの後ろに乗せたと、記念日に2時間遅れて私をなじる彼。顔を隠した末路
記念日の夜8時、アパートの前の駐輪場
記念日に2時間遅れた彼は、母を後ろに乗せていたと言いました
「母さんを後ろに乗せてたんだ。」
「遅れるのは、当たり前だろ。」
土曜の夜8時、アパートの前の屋根つきの駐輪場で、彼はヘルメットを脱ぐなり、そう言いました。
付き合って2年の記念日です。夜6時に彼が私の部屋へ迎えに来て、駅前のお店まで歩く約束でした。
連絡は一度も返ってこず、お店には7時に断りの電話を入れました。
その際、当日キャンセルの料金がかかると告げられています。バイクの音に気づいて下りていくと、彼はすでに並んだ自転車の向こう、いちばん奥にバイクをとめていました。
渡すつもりだった小さな紙袋を、私は両手で持ったままでした。
母は後ろの席で腰につかまっていたと、彼は言いました
急に母さんに駅まで送れと言われ、道が混んで進めなかった、と彼は続けます。
「母さんは後ろの席で腰につかまってた。」
「駅で降ろして、そのまま来たんだ。」
親孝行を責めるのかと言われ、私は言葉を返せずにいました
『せめて、連絡くらい』。私がそう言うと、彼は声を強めました。
「親孝行して、責められるのかよ。」
「記念日なんて、来年もあるし。」
彼のお母さんとは会ったこともなく、電話番号も知りません。母親を送ったという話が本当かどうか、確かめる手だてはありませんでした。
彼が母一人子一人で育ってきたことは、知っています。母親の話を疑えば、親孝行を責めていると思われそうで、私はそれ以上言い返せませんでした。そして、紙袋をそっと背中のうしろへ回しました。
「親孝行して、責められるのかよ」
彼はお店を今度でいいと言い、駐輪場の奥へ向かいました
彼は、私に背を向けました。
「お店は、今度でいいよな。」
並んだ自転車のあいだを抜けて、彼は駐輪場の奥にとめた自分のバイクへ戻っていきます。私は紙袋を持ったまま、そのあとを追いました。
彼のバイクは1人乗りで、後ろに座る席はついていません
自転車の列の向こう、奥の明かりの下に、彼のバイクがありました。
先月買い替えたと聞いていた新しいバイクです。さっきは自転車の陰になってよく見えませんでしたが、近づいて初めて、その車体を横からはっきりと見ることができました。
私は彼を見て、尋ねました。
「お母さんは、どこに座ったの?」
座る所は1人分だけで、その後ろは、車体が細くとがった形になっています。後ろの人がつかまる取っ手も、足をのせる所もありません。
人を後ろに乗せられない、1人乗り仕様のバイクでした。
前のバイクなら、私も何度か後ろに乗せてもらっていました。彼は言い訳に夢中で、今のバイクのことまで頭が回らなかったようです。
彼はヘルメットを握ったまま、声を張りました。
「荷台に座らせたんだよ!」
彼はシールドの奥で、友だちと遊んでいたと白状しました
私は、静かに返しました。
「荷台も何も、ついてない。」
彼はヘルメットをかぶり、黒いシールドを下ろしました。
その奥から、『……友だちと、ゲームセンターにいた』と、くぐもった声がしました。時間を忘れて、遊んでいたのです。
お店から請求されたキャンセル料は、彼に払ってもらうつもりです。
紙袋は、渡さないまま持ち帰ることにしました。
黒いシールドで顔を隠したまま、彼はヘルメットごと深くうなだれ、1人分の座席に片手をついていました。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














