「うちは躾に厳しいから」と言っていた義妹。だが、祖母の葬儀に現れた姿に思わず絶句
読経前のロビーで響いた声
夫の祖母の葬儀当日、私は会場のロビーで参列者の流れをぼんやり眺めていた。喪服の人々が静かに一列に並び、声を潜めて頭を下げ合う。空気が重く、照明まで沈んで見える時間だった。
そこへ、明らかに浮いた声が差し込んできた。
「久しぶり〜」
振り向くと、義妹が手を振っていた。私は声を出す前に、視線が彼女の頭頂部で止まった。
鮮やかなピンクの髪が、ロビーの控えめな照明の下でも目に痛いほど発色している。
隣には金髪の小学生になった姪。母娘で揃って色を抜いてきたのだろうかと、一瞬ぼんやり考えてしまうほど、その並びは葬儀の場から浮いていた。
嫁として呑み込んだ言葉
義妹が四十を過ぎていることは知っている。私と同年代だ。けれどここは、夫の祖母の葬儀の会場だった。
色を落とすか、ウィッグでもまとめるか、選択肢はいくつもあったはずだ。
普段、義妹は自分の子どもにマナー教育を熱心にしてきた人だと、夫から繰り返し聞いていた。
食卓での所作、目上への挨拶、服装の場面分け。そういう話題になると、彼女は決まって眉を寄せて語っていたという。
「うちは躾に厳しいから」
口癖のようにそう言って、姪をたしなめてきたとも聞いた。
その人が、四十を過ぎて、TPOを弁えずに鮮やかなピンクで身内の葬儀に立っている。私はその矛盾の前で、上手く笑顔を作れなかった。
(私が口を出すことじゃない。けれど、子どもに何を伝えるつもりなんだろう)
嫁の立場で言えることは、ほとんどなかった。挨拶を返すのが精一杯で、口元だけ動かすような会釈で焼香の列に紛れ込んだ。
姑の沈黙が告げた家風
会場の隅では、義父母も普通に振る舞っていた。義妹の髪色について、誰も触れない。
注意する人もいなければ、揶揄する人もいない。義妹本人も、自分の姿が場にそぐわないとは微塵も思っていない様子だった。
その沈黙こそが、私には一番恐ろしかった。家族の総意でこの色を許容しているとも取れるし、誰も諫められないほど強気な人なのだとも取れる。
どちらにしても、私が結婚で踏み込んだ家には、私の常識とは違う規範が静かに流れていた。
線香の煙越しにピンクの髪を見送りながら、私は嫁としての立ち位置をどこに置くべきか、ぼんやり考えていた。
(この人とは、価値観が違いすぎる)
怒りではない、冷たい確信だった。これから法事のたびに同じ光景を見ることになるのだろう。
子どもに厳しいしつけを語る彼女が、自分の番になると平気でこの色を選ぶ。その二重基準を、私は嫁の立場で口に出すことができない。
背筋に静かな冷気が走った。距離を保つこと。それだけが、嫁の私にできる自衛だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














