「私の名前だけ、お札にない」安全祈願する義実家のしきたり→疎外された嫁に夫が示した一手
4枚のお札に、私の居場所はなかった
結婚した年の暮れ、私は初めて夫の実家の仏間に通された。
壁の高いところに、四枚のお札が並んでいる。義実家に古くから伝わる家のしきたりで、年に一度、家族の名前で安全を祈願してもらうのだという。
義母がお茶を運んできて、お札を見上げる私に言った。
「毎年ね、この家の者の名前で安全祈願をしてもらってるの」
信じる信じないは人それぞれ。私は口を挟むつもりはなかった。
ただ、お札に書かれた名前を目で追って、指が止まった。
義父、義母、夫、義妹。四枚とも、血の繋がった人たちの名前だ。
「私の名前だけ、お札にない」
思わず声に出してしまってから、慌てて口をつぐんだ。
巻き込まれたくない気持ちもあったから、その日は何も言わなかった。
疎外された嫁に、夫が示した一手
やがて義妹が結婚し、子どもが生まれた。
それでもお札の名前は、四枚のまま増えなかった。義妹の夫も、その子どもも、祈願の輪には入っていない。
血の繋がった家族だけ。その線引きは、何年経っても揺るがなかった。
年に一度、お札を新しくする日は、家族総出の行事になる。義妹一家も集まって、賑やかにその年の無事を祝う。にぎやかな輪の中で、名前を呼ばれないのは、いつも私だけだった。
お札を見上げるたび、自分だけが薄いガラス一枚を隔てた外側にいるようで、心がすり減っていく。
とうとう私は、夫に胸のうちを明かした。
「毎年あのお札を見るのが、少しつらいの」
夫は黙って聞いたあと、次の帰省で、自分から義母に切り出してくれた。
「母さん。僕の名前、お札から外してくれていいよ」
「どうして。あなたは大事な家族でしょう」
「その家族に妻が入っていないなら、僕だけ守ってもらうのは違うと思うんだ」
義母は言葉に詰まり、しばらく何も言えずにいた。
「……気づかなくて、ごめんね」
ぽつりと、義母はそう漏らした。
義母を責めるつもりは、はじめからなかった。ただ、線の外側でひとり立っていた何年かを、夫が一緒に見て、隣まで来てくれた。それだけで、長く胸に居座っていたわだかまりが、ようやく形を変えていった。
その年から、我が家は自分たちのやり方で一年の無事を願うことにした。
「来年は、君と子どもの名前を、いちばん上に書こう」
初詣で家族全員の名前を書いた小さなお守りを買い、玄関にそっと飾る。夫のその一言と一緒に、驚くほど心が軽くなった。
誰かの決めた四枚の枠に、私の名前があるかどうか。そんなことは、もうどこかへ消えていた。
隣で子どもを抱く夫こそが、私にとっていちばん確かな家族だったから。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














