「もう昔ほど可愛くないわね」本人の前で夫を笑う義祖母。だが、帰りの車での妻の言葉に救われた
貝のように黙る夫
結婚したばかりのころ、夫の父方の祖父母へあいさつに出かけた。物静かな夫が、この祖父母のことだけは「話し好きで、正直ちょっと苦手」と漏らしていたのが、妙に引っかかっていた。おしゃべり好きの私は、逆に楽しみなくらいだったのだけれど。
「待ってたよ、さあさあ上がって」
家に着くと、祖父母は驚くほど朗らかに迎えてくれた。お茶を出し、お菓子を並べ、話し上手で、聞いているだけで飽きない。
ただ、私が口を挟もうとすると、話題はいつのまにか、するりと二人のほうへ戻っていく。
「それでね、うちの若いころなんてね」
気づけば、私はずっと聞き役だった。
近所で評判の店の話から、親戚の誰それの結婚話まで、話題は次から次へと湧いてくる。二時間、三時間と続く長話に、相槌を打つので精いっぱい。
それでも顔には出さず、笑顔でうなずき続けた。何より不思議だったのは、隣の夫がひと言も喋らないことだった。
「ねえ、そうよね」
祖母に話を振られても、こくりとうなずくだけ。私と二人のときはよく笑って話す人が、ここでは石のように押し黙っている。
他の家族の前では無口なりに言葉を返すのに、この二人が相手だと一言も出てこない。それだけ苦手なのだと、痛いほど伝わってきた。
車内でこぼれた本音
そのうち、夫の幼いころのアルバムを開く流れになった。
あどけない笑顔の写真が並ぶ。祖母はそれを一枚ずつ眺め、隣の夫にちらりと目をやって笑った。
「もう昔ほど可愛くないわね」
本人の目の前での軽口に、夫はますます背を丸めてしまった。私はどう返そうか迷って、その場ではあいまいな愛想笑いを浮かべることしかできなかった。胸の奥に、ちりちりと焦げるような感覚だけが残った。
長い長い時間がようやく終わり、二人で車に乗り込む。祖父母に手を振り、しばらく走ったところで、私は急に腹が立ってきた。
「今も十分可愛いよ」
褒めているのに、なぜか怒った口ぶりになる。
「さっきのあれ、ちょっとひどいよね。あなたは、今のあなたが一番いいんだから」
運転席の夫は、きょとんとした顔で私を見た。それから、ふっと肩の力を抜いて、やわらかく笑った。
「……お前がそう言ってくれるなら、もういいや」
めったに弱音を見せない夫の、めずらしく素直なひと言だった。あの窮屈な時間も、この一言のためにあったのかもしれない。祖父母の無邪気な失礼は、まあ笑って受け流せばいい。そう思えたとき、来たときよりずっと軽くなった車内で、夫との距離が、ほんの少しだけ縮まった気がした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














