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2025.11.26(Wed)

「俺の税金で飯食ってるんだろ」と市役所で怒鳴る男。だが、職員にある正論を言われ思わず沈黙【短編小説】

「俺の税金で飯食ってるんだろ」と市役所で怒鳴る男。だが、職員にある正論を言われ思わず沈黙【短編小説】

公務員なら一度は聞くセリフ

これは私が市役所の市民課で窓口業務を担当していた時の出来事です。

年度末の繁忙期、窓口は引っ越しの手続きや証明書の発行を求める市民の方々でごった返していました。
長時間お待たせしてしまうこともあり、私たち職員も申し訳ない気持ちで必死に対応していました。

そんな中、フロアに響き渡る怒鳴り声が聞こえてきました。

「いつまで待たせるんだ! 俺は忙しいんだぞ!」

声の主は50代くらいの男性でした。
私の同僚が

「申し訳ございません、順にお呼びしておりますので……」

と丁寧になだめようとしましたが、男性の怒りは収まりません。

「うるさい! こっちは客だぞ! お前ら、俺の税金で飯食ってるんだろ!?」

出ました。公務員なら一度は言われるこのセリフ。

「俺たちの税金で給料もらってるんだろ? 俺は言わばお前らの『雇い主』だ! 雇い主に向かってその態度はなんだ!」

男性はカウンターをバンバンと叩き、周囲の市民の方々も怖がって距離を取り始めていました。
同僚は青ざめてただ謝るしかありません。
その時です。奥からベテランの女性課長が静かに歩み出てきました。

ベテランの課長

課長は男性の目をまっすぐに見つめ、穏やかですが、毅然とした声で言いました。

「お客様、貴重な税金を納めていただき、誠にありがとうございます」

男性は

「ふん、わかればいいんだよ」

と鼻を鳴らしました。
しかし、課長は言葉を続けました。

「ですが、一つ訂正させてください。ここにいる職員も皆、この市に住む市民であり、お客様と同じように住民税や所得税を納めております」

男性が「あ?」と間の抜けた声を出しました。

「つまり、私たちも自分たちの給料の一部を自分たちの税金で賄っている『納税者』です。私たちは互いに税金を出し合い、この街の社会インフラを支え合う対等な『住民同士』なのです。そこには雇い主と召使いのような主従関係は存在しません」

課長はさらに一歩踏み込みました。
「公務員は『全体の奉仕者』であって、特定の個人の理不尽な命令を聞くための『個人的な召使い』ではありません。これ以上の大声や威圧的な態度は、他のお客様への迷惑行為となりますので、警察へ通報させていただきますがよろしいですか?」

「う……」

男性は口をパクパクさせましたが、言い返す言葉が見つからないようでした。
周囲からは「そうだそうだ」という空気と共に、冷ややかな視線が彼に集中しました。
結局、男性は「……書類、忘れたから取ってくる」と小声で言い訳をし、逃げるように庁舎を出ていきました。

その後、彼が戻ってくることはありませんでした。
毅然と言い返してくれた課長の姿は本当に頼もしく、私も「対等な住民として、誇りを持って仕事をしよう」と改めて思いました。

 

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

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