「明朝確認できる状態にしてほしい」プロジェクトリーダーからの要望。徹夜して問題を解決した瞬間
明朝までの締切、積み重なる失敗
プロジェクトリーダーから「明朝確認できる状態にしてほしい」と言われたのは夕方のことだった。
ソフトウェアエンジニアとして働いて数年、こういう夜には慣れているつもりだった。
ところが、今回のバグは手強かった。
コードのどこに問題があるのか、ログを読んでも再現手順を追っても見えてこない。
テストを走らせるたびに違う結果が出る。一時間、二時間と経つうちに、自分の読み方自体が正しいのかさえ疑い始めていた。
外の気配がなくなった。コーヒーが空になった。画面の数字が意味を失い始めるような、疲弊の底に来ていた。
それでも手を止められなかった。
締切は朝だ。諦めるという選択肢は、最初から頭になかった。
エラーの種類を変えて検索する。
似た事例を探す。どれも決定打にならない。深夜二時を過ぎたころ、自分のコードを最初から読み直すことにした。答えがないのではなく、見逃しているだけだと自分に言い聞かせながら。
「ダメ元でやってみよう」と動いた手
集中力が完全に切れかけたころ、ふとコードの一箇所に目が止まった。
確認済みのはずの場所だったが、もう一度だけ見直す気になった。
処理の順序。ほんのわずかなずれ。何時間も見ていたのに、なぜかずっと素通りしていた一行だ。
「ダメ元でやってみよう」
確信はなかった。外れたとしても、今さら傷つく余裕もなかった。ただ、可能性がゼロではないと感じた直感だけを頼りに、キーボードを叩いた。変更は一行のみ。数秒で終わった。
テストを走らせる。ターミナルの文字を追う。エラーが出ない。処理が流れていく。完了のメッセージが並んだ。
一発で起動した画面の前に、言葉がなかった
「マジか…一発で通った」
画面を見つめたまま、しばらく動けなかった。信じられなかったのか、疲れ果てていたのか、両方だったかもしれない。
声も出なかった。ただ、画面の完了表示をじっと見ていた。
「絶句」という言葉があるとすれば、ああいう瞬間のことを言うのだと思った。
自分への驚きに近い、不思議な静止感だった。
翌朝、プロジェクトリーダーへの報告は短かった。
「対応完了しました」。返事も短かった。「確認します」。それだけだ。
何時間もかけた格闘の記録は、コードのコミット一行に静かに刻まれた。その一行の重さを知るのは、自分だけでいい。
それで十分だ。何度経験しても、この瞬間の感覚だけはほかの何にも替えられない。エンジニアをやっていてよかった、と思える数少ない瞬間のひとつだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














