tend Editorial Team

2026.06.15(Mon)

「あの服、私のよね」捨てたはずの服を着ている近所の住人。我慢出来なかった私が取った対策とは

「あの服、私のよね」捨てたはずの服を着ている近所の住人。我慢出来なかった私が取った対策とは

見覚えのあるシルエット

断捨離をするたび、私は着古した服をまとめて捨てていた。

裾のほつれたワンピース、首回りの伸びたTシャツ。前の晩に袋へ詰めて集積所に出すのが習慣だった。

ある日、買い物帰りの道で、見覚えのあるシルエットとすれ違った。

「あの服、私のよね」

首回りの伸び方も色あせ方も、間違いなく先週捨てたTシャツだった。それを近所の女性が、普段着として歩いている。

「あら、いいお天気ね」

彼女は私のTシャツを着たまま、にこやかに会釈してきた。

「……ええ、本当に」

相づちを打つのが精一杯だった。自分の捨てた服が、こんなに近くを歩いているなんて。

袋の前で

その正体がはっきりしたのは、収集日の朝だった。集積所で、彼女が私の袋の結び目をほどいていた。

「捨てるならもったいない」

「これ、まだ十分着られるじゃない」

「それ、ずいぶん傷んでいるものですが……」

「傷んでたって着られるのよ。あなたには分からないでしょうけど」

悪びれる様子もなく、彼女は服を選り分けていく。

気に入った一枚を腕にかけ、もう一枚を広げて眺めた。

「これも頂くわね。あなた、いいもの捨てるじゃない」

私はその手元を見ていることしかできなかった。捨てたものだと言い聞かせても、気まずさは消えない。パジャマ代わりの服をすぐそこの人に着られている。その落ち着かなさだけは、どうしても残った。

回収日の朝に

もう前の晩には出さない。出すのは収集車が来る当日の朝、それも回収の直前だ。袋も、中身が見えない不透明なものに替えた。

その朝も、彼女は早くから集積所をうろついていた。けれど、私の袋はまだそこにない。

「あなた、今日は出さないの?」

「今、出しに行くところです」

「最近、出すのが遅いわね。前みたいに早く出してくれない?」

「収集の時間ぴったりに出したいので、これでいいんです」

声をかけられても、私はトラックの音が近づくのを待って袋を置いた。彼女が結び目に手をかける暇もなく、袋は荷台へ消えていく。

その次の回収日、二階の窓から外を見ていた私は、集積所に立つ彼女に気づいた。並んだ不透明な袋の前で、迷うように立ち止まっている。

一つの袋に手を伸ばし、持ち上げかけて、中が見えないと知ると静かに戻す。隣の袋ものぞき込むが、どれが誰のものか分からない。結局、彼女は何も手に取らず、うつむいて帰っていった。

それきり、彼女が集積所に張りつくことはなくなった。道で私の古着を見かけることも、ぴたりと止んだ。自分の服を着た他人とすれ違って目を逸らす、あの日々が嘘のようだ。捨てた服のその後を、もう誰にも見られていない。たったそれだけで、毎朝の足取りが軽くなった。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.06.15(Mon)

先輩「普通もっと早くできるけど」残業で仕上げた資料を人前で嘲笑。だが、上司の称賛で黙り込んだ
tend Editorial Team

NEW 2026.06.15(Mon)

「子供なんていません!何かの間違いでは?」騒音の苦情の手紙を真上の住人に送った。だが、意外な犯人に思わず笑った
tend Editorial Team

NEW 2026.06.15(Mon)

「分別が間違っています!」と玄関前にゴミ袋を戻す住人。だが、掲示板の張り紙で状況が一変
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.01.01(Thu)

「不敬です」「伝統芸能への敬意を持ってほしい」と批判的な声も。石破茂氏、土足のまま能舞台で対談する姿を公開、放送元が謝罪
tend Editorial Team

2025.08.16(Sat)

朝倉海、UFCメインカード出場へ!「頑張って!日本から応援してます!」と激励の声が止まらない
tend Editorial Team

2025.10.20(Mon)

「葬式代は折半で」と言い出した義妹。だが香典袋を数えたら、私の名前の袋が一番多かった【短編小説】
tend Editorial Team