「男の子が欲しかったんだ」全国大会も応援に来なかった父が、娘の結婚式で大号泣、25年分の本音に妻が放った一言
団扇をあおぐ夫
娘が赤ん坊だった頃から、夫は子育てにまるで関心がなかった。オムツも替えず、あやすこともしない。話しかけている姿すら、ついぞ見たことがなかった。
「たまには抱っこしてあげてよ」
「俺がやると泣くからな」
そう言って、いつもさっと部屋を出ていった。お風呂に入れることだけは、なぜか黙ってやってくれたけれど。
娘は水泳でめきめき伸び、ついに全国大会の決勝にまで進んだ。私は夫を無理やり会場へ引っ張り出した。
「ほら、もうすぐ娘の番よ。ちゃんと見て」
「暑い暑い」
夫は団扇をあおぐばかりで、プールではなく自分の額の汗を気にしていた。
娘が水面を駆け抜ける晴れ姿にも、その手は止まらない。
「あの子、入賞したのよ。すごいでしょう」
「ふうん、よかったな」
進学の相談をしても上の空。私はこの人に父親らしさを期待するのを、とうにあきらめていた。
涙の一つも出ない
歳月は流れ、娘の結婚式の日。
バージンロードの手前で、信じられないことが起きた。
「ううっ……すまない、止まらん……」
娘の手を引く夫が、人目もはばからず号泣しはじめたのだ。あれだけ何にも興味を示さなかった人が、肩を震わせて泣いている。
私は、ぽかんとしてしまった。胸が熱くなるどころか、涙の一つも出てこない。
「お父さん、泣くんだ(笑)」
娘も、晴れ着の母を振り返って吹き出した。責めるでもなく、心底おかしそうに。
夫はうつむいて、小さく縮こまっていた。25年見てきた私には、その涙がどうにも遅すぎた。
こぼれた本音
孫が三人、いずれも男の子だった。すると夫は、人が変わったように溺愛しはじめた。週末ごとに迎えに走り、肩車をし、図鑑を広げてやる。
「あなた、娘にはあんなに冷たかったのにねえ」
「……正直に言うと、男の子が欲しかったんだよ、ずっと」
長年の無関心の理由が、こんなにあっさり出てくるとは。
私は絶句し、それから笑いが込み上げた。身勝手で不器用な人が、孫を通してようやく人間らしくなった気がした。
「だったら、娘の25年分、この子たちに倍にして返しなさいよ」
「……倍か。それは、こたえるな」
夫は決まり悪そうに頭をかいた。それからは送り迎えを一度も休まず、運動会には朝いちばんで場所取りに出かけるようになった。
あれだけ娘の大会に来なかった人がだ。
「じいじ、また来てね!」
孫に手を引かれて、うれしそうに目尻を下げている。その背中を見ているうちに、25年つかえていたものが、ふっとほどけていった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














