「嬉しいけど、それは違う」高熱の私に5時間看病してくれた夫。だが、夫の独特な優先順位に苦笑い
5時間後に見た光景
高熱で寝込んだ私が目を覚ましたのは、眠りについてから5時間も経った夜だった。ぼんやりした頭で横を向くと、夫がベッドのわきに座っていた。
「あ、起きた。気分どう?」
「もしかして、ずっとそこにいたの?」
「ずっと見てた」
「寝てる間に苦しくなったら大変だと思ってさ」
そのまっすぐな言葉に、胸がじんとした。けれど起き上がって部屋を見たとたん、その感動は別の感情に変わっていく。
洗濯物は洗濯機に入ったまま。台所のシンクには、皿の山。看病は完璧なのに、家のことは何ひとつ進んでいなかった。
「お腹空いたよ」
そして極めつけが、夫本人だった。
「ねえ、お昼も夜も食べてないの?」
「お腹空いたよ」
悪びれもせず、夫はそう答えた。
5時間、飲まず食わずで、ただ私の寝顔を見守り続けていたのだ。
「どうして自分のご飯を先に食べなかったの」
「だって、目を離してる間にきみに何かあったら困るし」
(嬉しいけど、それは違う)
あまりに大真面目な答えに、私は笑うしかなかった。心配してくれる気持ちは、痛いほど伝わってくる。ただ、その注ぎ方が、とにかく不器用なのだ。
「気持ちはほんとに嬉しいよ。でもね」
「うん?」
「私の次でいいから、ちゃんと自分のことも大事にして」
夫はしばらく考えるような顔をして、それから「なるほど」と小さくうなずいた。優しいけれど、優先順位がどうにも独特な人だった。
学習した夫の成長
後日、私がまた別の風邪で寝込んだとき、夫の行動は前回と違っていた。
気づけば部屋は片付き、洗濯機は静かに回っている。そして枕元に、湯気の立つ器が運ばれてきた。
「雑炊作ったよ。きみのと、俺の」
器は、ちゃんと二つ。自分の分も、しっかり用意してある。
「えっ、自分のも? すごいじゃない」
「あのとき言われたからさ。ちゃんと成長したでしょ」
夫は誇らしげに胸を張った。そのドヤ顔が妙にかわいくて、私はまた笑ってしまう。
「うん、大成長。前は飯抜きだったもんね」
「あれは反省したよ。きみを見てたら、自分のことまで頭が回らなくてさ」
「気持ちは嬉しかったよ。でも今回は、ちゃんと二人分。それがいちばん嬉しい」
「だろ? 看病しながら家事も飯も、全部こなせる男になったってこと」
得意げに言う夫に、私は思わず吹き出した。
「もう同じ失敗はしないって決めたんだ」
レトルトの雑炊は、世界一おいしく感じた。不器用な人が、不器用なりに私の言葉を覚えていてくれた。それだけで、熱で重かった体が、少しだけ軽くなった気がした。優先順位が独特なこの人を、私はやっぱり選んでよかったと思う。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














