「習い事やめるかもって聞いたけど、大丈夫?」なぜか知られていた家庭の事情。噂の出所になっているママ友を追求した
別のママからの確認
その日、ほとんど面識のないママから声をかけられて、私は固まった。子どもの習い事を続けるか迷っていることを、なぜか知っていたのだ。
「習い事やめるかもって聞いたけど、大丈夫?」
迷いを打ち明けた相手は、ひとりしかいなかった。入園当初に気さくに近づいてきて、いちばん仲良くしていたつもりのママだ。
思い返せば、子どもを一日休ませた翌日にも、引っかかる一言があった。門の前で笑顔のまま、こう言われたのだ。
「昨日いなかったから、最近よく休むよねって、みんなで話してたの」
あのときは流した。でも、その続きはもっと引っかかっていた。私が何も返せずにいると、彼女はとどめのように付け足したのだ。
「みんなで心配してたの」
心配という言葉を盾にして、いない人の話で盛り上がる。
その空気を、笑顔の奥にうっすら感じていた。けれど家庭の事情まで漏れているとなれば、もう気のせいでは片づけられなかった。
出どころを突く
翌朝、送迎の列でそのママを見つけ、私は静かに歩み寄った。責めるつもりはなく、ただ事実を確かめたかった。
「その話、あなたにしかしてません」
彼女は一瞬きょとんとし、それから早口になった。
「心配してあげただけよ、悪気なんて」と言葉を重ねてくる。けれど、心配と暴露はまったく別の話だ。
「心配してくださったなら、私に直接聞けばよかったですよね」
そう返すと、彼女の笑顔が崩れた。
頬が引きつり、視線が地面に落ち、最後は「……ごめん」とだけ漏らして口をつぐんだ。
仮面が外れて
そのやり取りを、周りのママたちも黙って見ていた。ひとりがそっと私の隣に並び、「うちの話も、出回ってたことがあって」と小声で言った。
別のママも「実は私も」と続ける。流していた人物が誰なのか、その瞬間に全員で共有された。
彼女は何か言いたげに口を開きかけたが、誰とも目が合わない。集まっていたママたちが一歩ずつ距離を取り、その輪の中で彼女だけが浮いていた。
それから私は、彼女には天気や行事の予定しか話さなくなった。家庭のことも、子どもの相談も、一切口にしない。
世間話に乗ってきても、当たり障りのない返事で受け流す。仕入れる相手を失った噂は、行き場をなくして自然と止まった。
気さくさを装って情報を集め、面白おかしく配って回る。その仕組みが見えてしまえば、距離を置くのは難しくなかった。
彼女は今、私と目が合うと先に逸らす。余計なことを言わずに済む関係は、思っていたよりずっと気楽だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














