「そんな接客なら上に言ってやるよ」レジで怒鳴った客。翌週、もう一度私の前に現れた理由
「前の人のことは覚えてるのに」
学生時代、駅前のコンビニで朝のシフトに入っていた頃のことです。
平日の朝は、毎日のように同じ時間に来店するお客様が何人もいました。
中でも、紺色の作業着を着た男性は半年ほど前からほぼ毎朝来ていて、買うものも決まっていました。
その日も男性がレジに来ると、私は棚からいつもの缶コーヒーを取りました。
「今日もこれでいいですか?」
「うん、ありがとう」
男性が会計を済ませ、その次に並んでいた別の男性がレジの前に立ちました。
その人も何度か見かけたことはありましたが、まだ顔と買う商品までは結びついていませんでした。
すると男性は、先ほどのやり取りを見ていたらしく、不満そうに言いました。
「あの人のは覚えてるのに、俺のは覚えてないの?」
「申し訳ありません。まだ覚えきれていなくて……」
そう答えると、男性の表情が険しくなりました。
「もう3回は来てるぞ。そんな接客なら上に言ってやるよ」
突然強い口調で言われ、私は何と返していいのか分からなくなりました。
そこへ、近くで品出しをしていた先輩スタッフが来てくれました。
「申し訳ありませんが、お客様のお買い物をすべて記憶するサービスは行っておりません。こちらのスタッフに落ち度はありません」
落ち着いた声でした。
男性は何か言いかけましたが、後ろに列ができていることに気づくと、それ以上は何も言わず会計を済ませて帰っていきました。
翌週、同じ男性がもう一度やってきた
それから数日は、レジに立つたびに少し緊張しました。
またあの男性が来たらどうしようと思っていたからです。
そして翌週の朝、本当に男性が店に入ってきました。
私は身構えましたが、男性は商品を持ってまっすぐ私のレジへ来ました。
ところが、この日は声を荒らげませんでした。
「この前は悪かったね」
予想していなかった言葉に、私は思わず顔を上げました。
「毎朝来てる店だから、勝手に自分も覚えられてると思い込んでた。あんたに怒ることじゃなかった」
先週とは別人のような静かな口調でした。
「いえ……ありがとうございます」
私はそれだけ答えました。
それから男性は、ときどき朝の時間帯に来店するようになりました。
無理に商品を覚えようとしたわけではありません。それでも何度も接客しているうちに、自然と顔を覚え、よく買う缶コーヒーも分かるようになりました。
ある朝、男性が商品を持ってくる前に、たまたま目に入った缶コーヒーを見て私は聞きました。
「今日は、いつものコーヒーも一緒ですか?」
男性は少し驚いた顔をしてから、笑いました。
「覚えてくれたんだ」
それ以来、隣のレジが空いているときでも、男性が私の列に並ぶことが増えました。
最初の出来事は今でも怖かった記憶として残っています。ただ、自分の態度が悪かったと後から言葉にして謝る人もいるのだと知った出来事でもありました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














