「すみません。ちょっと寝不足で」疲れて思わぬ質問をしてしまった私。だが、客の一言に救われた瞬間
朝から言い間違いが続いていた
スーパーのレジに立ち始めて、まだ数か月のころのことです。
その日は寝不足だったせいか、朝からどうにも調子が出ませんでした。
レジ袋の有無を聞くところで言葉につまったり、「ありがとうございました」と言うはずが別の言葉になりかけたり、小さな言い間違いが続いていました。
「今日はどうしたの。珍しいね」
顔なじみのお客さんにそう言われ、私は苦笑いしながら頭を下げました。
「すみません。ちょっと寝不足で」
ちょうどそのころ、レジの近くでは品出しも続いていました。
少し前には、背の高い棚に商品を置こうとしていた同僚が、私にこう聞いてきたばかりでした。
「この棚って、170センチくらいあるかな?」
私は「それくらいじゃないですか」と答え、そのままレジへ戻りました。
それからしばらくして、50代くらいの男性が私のレジにやってきました。牛乳や食パン、缶詰などをカゴから取り出し、静かに財布を用意しています。
商品をすべて通し、会計を進めようとしたときでした。
いつものようにポイントカードの有無を確認しようとして、なぜか先ほどの会話が頭に残っていたのでしょう。
私は男性に向かって、こう聞いてしまったのです。
「身長、170くらいですか?」
言った瞬間、自分でも固まりました。
なぜ会計中のお客さんに身長を聞いているのか、自分でも分かりません。
「……すみません。ポイントカードはお持ちですか、と聞こうとして……」
慌てて言い直しました。
無口なお客さんが返した一言
男性は一瞬だけ私の顔を見ました。
怒らせてしまったかもしれないと思い、さらに謝ろうとしたときです。
男性は自分の頭のあたりに手をやって、淡々と言いました。
「まあ、170くらいですかね」
その返しがあまりにも自然だったので、私は思わず笑ってしまいました。
すぐ後ろに並んでいた女性からも、小さな笑い声が聞こえます。
「本当にすみません」
「いや、合ってますから大丈夫ですよ」
男性はそう言うと、今度は財布からポイントカードを取り出しました。
「こっちも持ってます」
また後ろから笑い声が聞こえ、張りつめていた気持ちが少しだけ軽くなりました。
会計を終え、商品を渡すと、男性はいつも通り静かな様子で帰っていきました。
そのあと休憩に入ったとき、先輩にこの出来事を話しました。
「それは完全にお客さんに助けられたね」
「はい。本当に恥ずかしかったです」
それからは、寝不足の日ほど一つひとつの言葉を意識して接客するようになりました。
今でもレジで言葉につまりそうになると、あの日の男性の「170くらいですかね」という落ち着いた返事を思い出します。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














