「香典も段取りも、俺に任せておけ」葬儀の打ち合わせで話し続ける親戚。だが、担当者が静かに返した一言とは
葬儀の打ち合わせに現れた親戚
祖母が亡くなったときのことです。
通夜と葬儀の日程が決まり、母と私は葬儀社の担当者と打ち合わせをすることになりました。
そこへ、「親戚のことなら自分が一番詳しいから」と、母の従兄弟も同席してくれることになったのです。
昔から親戚の集まりでは率先して動く人で、最初は私たちも心強く感じていました。
「こういうときはな、親戚同士の順番とかもあるから。香典も段取りも、俺に任せておけ」
そう言って、母の従兄弟は胸を張りました。
担当者も「分からないことがあれば、ぜひ教えてください」と丁寧に頭を下げ、打ち合わせが始まりました。
決まりかけるたびに始まる昔話
受付を誰にお願いするか、親族席をどうするか、当日の車を何台用意するか。
担当者が一つずつ確認してくれたため、最初の30分ほどは順調でした。
「では、受付はこちらのお二人にお願いする形でよろしいでしょうか」
担当者が確認すると、母も私もうなずきました。
ところが、母の従兄弟が口を開きます。
「いや、待って。昔は受付いうたら、本家に近い人間がやるもんやったんや」
そこから、二十年以上前の親戚の葬儀の話が始まりました。
「あのときは誰が受付に立って」「この家はどこに座って」と、話は次々と広がっていきます。
担当者が頃合いを見て、
「今回については、こちらの形で問題ないと思います」
と話を戻そうとしました。
しかし今度は、
「そうそう、席順の話で思い出したけどな」
と、別の思い出話が始まりました。
話し合った末に戻った最初の案
車の台数を決めようとすれば送迎の昔話、食事の数を確認すれば昔の法事の話。
担当者も何度か、
「その件はあとで確認するとして、先に当日の予定を決めてもよろしいでしょうか」
と話を区切ろうとしていました。
それでも母の従兄弟は、
「いや、これが大事なんや」
と言って話を続けます。
私も途中で何度か声をかけましたが、「もうちょっとだけ」と手で制されてしまいました。
時計を見ると、打ち合わせを始めてから一時間近く経っています。
そこで担当者が資料を机の中央に置き、少しだけ声の調子を変えました。
「お気持ちはよく分かりました。ただ、まずは明日の通夜を滞りなく行うために、今日決める必要があることを先に決めさせてください」
母の従兄弟は少し驚いたような顔をしましたが、資料に目を落とします。
「……まあ、それもそうやな」
担当者は受付、席順、車の手配について、最初に出していた案をもう一度説明しました。
すると母の従兄弟はしばらく考え、
「うん。それでええと思う」
と、あっさりうなずいたのです。
結局、ほとんどの項目は最初に決まりかけていた内容のままでした。
帰り際、母の従兄弟は満足そうに、
「やっぱり、ちゃんと話し合うのが大事やな」
と言いました。
私と母は顔を見合わせましたが、何も言いませんでした。
玄関まで見送ったあと、担当者が小さく笑いながら言いました。
「明日は私のほうで、必要なところだけ話を区切りながら進めますね」
「お願いします」
母と私は、ほとんど同時に答えていました。
善意で力になろうとしてくれているのは分かります。それでも、話が長くなりすぎると、肝心なことがなかなか決まらないのだと実感した夜でした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














