「肩書きで態度は変えてほしくなかった」両家顔合わせで父の職業を持ち上げる義父。私が夫に打ち明けた本音とは
初めての席で
結婚を前にした顔合わせの日、私は少し緊張しながら料亭へ向かいました。
夫となる人の両親ときちんと向き合うのは、その日が初めてだったからです。
私の父は、ある専門職を長く勤め上げてきました。とはいえ収入がとりわけ多いわけでもなく、ごく平凡な暮らしを続けてきました。
席につき、料理が運ばれ、はじめは当たり障りのない世間話が続いていました。
空気が変わったのは、義父が父の仕事を耳にした、その瞬間だったのです。
三度のお酌
義父は身を乗り出すと、父の盃に酒を注ぎました。
父がまだ飲み干してもいないのに、二度目、三度目と、続けざまに瓶を傾けていきます。
「そんなご立派なお仕事とは。いやあ、我が家には過ぎた御縁ですよ」
父の肩書きを、義父は何度も口にして持ち上げました。
父が恐縮して手を振っても、その称賛はやむ気配がありません。
3杯も続けて注がれた父は、すっかり困り果てた様子でした。
私は隣で、その光景をただ見ていることしかできなかったのです。
義父の声はだんだん大きくなり、まわりの仲居さんまで手を止めて振り返るほどでした。
もてはやされればされるほど、父の背中が縮こまっていくのが、隣にいてよく分かりました。私は膝の上で、そっと手を握りしめていることしかできませんでした。
ずっと引っかかる本音
もてなしのつもりなのだろう、と頭では分かっていました。
それでも、仕事の肩書きひとつで態度をここまで変える人なのだと知って、胸がざわついたのです。
もし父がありふれた職に就いていたら、この人は同じように笑ってくれただろうか。
そんな意地の悪い問いが、頭から離れませんでした。
人を肩書きで測るような目を、これから何度も見ることになるのかと思うと、気が重くなったのです。
帰り道、私は夫にだけ、正直な気持ちを打ち明けました。
「肩書きで態度は変えてほしくなかった」
夫は「親父なりに気をつかったんだよ」と笑っていました。悪気がないのは、私にもよく分かっています。
だからこそ、この引っかかりを誰にぶつけることもできません。うまく言葉にならない本音だけが、今も私の中で、そっとくすぶり続けています。父を大切に思う気持ちと、義父へのささやかな不信とが、いつまでも胸のなかで折り合わずにいるのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














