「先生に聞こえる声で言わなくても」授業参観中に続いた保護者の苦言。それでも新任の先生は授業を止めなかった
授業が止まるたび、後ろから声が聞こえました
その日の参観日、私は教室の後ろで授業を見ていました。
担任は、この春に着任したばかりの若い先生です。
まだ授業の進め方には少しぎこちなさがありましたが、子どもの話をよく聞いてくれる先生で、私は特に不満を感じたことはありませんでした。
ただ、同じクラスの保護者の中には、先生の教え方を気にしている人もいました。
私の少し離れたところに立っていた三人の母親も、その一人だったようです。
授業が始まり、先生が黒板に問題を書きました。
「では、この続きを考えてみましょう」
ところが、次の説明へ進もうとしたところで、先生の言葉が一度止まりました。教科書を確認し、少し考えてから言い直します。
すると、後ろから小さな声が聞こえました。
「また止まったね」
別の人も続けます。
「うちの子が分かりにくいって言うのも、こういうところなのかな」
三人だけで話しているつもりなのかもしれません。しかし、静かな教室では前のほうまで聞こえそうな声量でした。
先生も気づいたのか、一瞬だけ言葉に詰まりました。
私は「先生に聞こえるような声で言わなくてもいいのに」と思いましたが、その場で注意することはできませんでした。
参観日に保護者同士で言い合いになるのも避けたかったですし、どこまで口を出していいのか迷ったからです。
隣にいた保護者と目が合いました。その人も困ったような表情をしていましたが、何も言わず前を向き直りました。
先生は子どもたちへ向き直りました
そのとき、先生は一度教科書を閉じました。
そして黒板ではなく、子どもたちのほうを見ました。
「ここまでで、分かりにくかったところはありますか?」
すると、一人の子が手を挙げました。
「ここがよく分かりません」
先生はうなずき、さっきとは違う言い方でもう一度説明しました。
「じゃあ、こう考えてみようか」
別の子も手を挙げます。少しずつ教室の空気が授業へ戻っていきました。
後ろにいた三人からも、それ以上の声は聞こえてきませんでした。
先生は途中で何度か教科書を確認しながらも、最後まで授業を続けました。
終了の時間になると、子どもたちがそろって挨拶をします。
私は教室を出る直前、先生に「ありがとうございました」とだけ伝えました。
あのとき、保護者のひと言を止められなかったことは今でも少し心に残っています。
ただ、授業がうまく進まない場面があっても、周囲の声に反応するのではなく、目の前の子どもたちへ向き直った先生の姿はよく覚えています。
新任だからこそ緊張することも、迷うこともあるのでしょう。それでも最後まで授業を続けた先生を見て、私は改めて、この先生を見守っていきたいと思いました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














