「また、その話をしてる」法事の席で噂話を広げようとした親戚。だが、誰も話をつながなかった理由
法事の席で、何度も同じ話をしていた親戚
数年前、親戚の法事に出たときのことです。
会食の席では、故人との思い出を話したり、久しぶりに顔を合わせた親戚同士で近況を尋ねたりしながら、穏やかな時間が流れていました。
そんな中、ひとりだけ席を立っては、別の親戚のところへ話しかけに行く女性がいました。
親戚のおばさんです。
もともと人の近況に詳しく、親戚が集まると「あの人は最近こうらしい」「あちらの家ではこんなことがあったらしい」と話題を持ち出すことが多い人でした。
この日も、しばらくすると近くに座っていた人へ身を寄せ、小さな声で何かを話し始めました。
最初は気にしていなかったのですが、その後、おばさんが別の席へ移ったとき、同じような話し方をしていることに気づきました。
「また、その話をしてる……」
私にも会食が始まる前に話してきた内容でした。
ある親戚の家庭についての話で、本人から聞いたわけではないようでした。しかも、その話の当事者も同じ会場にいます。
私は聞いたときから、わざわざこの場で広げるような話ではないと思い、それ以上尋ねませんでした。
誰も続きを聞こうとしなかった
おばさんは、その後も何人かの親戚に同じ話をしていました。
ただ、不思議なほど誰も話に乗りませんでした。
「そうなんですか」
「へえ、そうだったんですね」
返事はするものの、「それでどうなったの?」と続きを尋ねる人はいません。
むしろ話が途切れると、すぐに故人の思い出や別の話題へ戻っていきました。
ある人は、
「そういえば、昔よく畑に行っていましたよね」
と故人の話を始め、別の人も、
「朝が早い人でしたね」
と応じていました。
おばさんを注意した人はいません。
それでも、誰も噂話を次の人へ伝えようとはしませんでした。
何度か同じようなやり取りが続くうちに、おばさんも反応が薄いことに気づいたようです。
やがて席を立つこともなくなり、自分の椅子に座ったまま食事を続けていました。
その後、親戚のひとりが故人の昔の写真を取り出しました。
「これ、ずいぶん若いころですね」
写真が順番に回されると、それまで静かだった人たちも自然と話し始めました。
「このころは、まだあの家に住んでいたんじゃない?」
「そうそう。この写真の少しあとだったと思う」
気づけば、みんなの話題はすっかり故人の思い出に戻っていました。
噂話を止めるために、誰かが強く注意したわけではありません。
ただ、誰も続きを求めず、誰も広げなかった。それだけで、その話はそこで終わりました。
人が集まる席では、つい誰かの話が話題になることもあります。
けれど、本人のいないところで聞いた話を、さらに別の人へ伝える必要はありません。あの日の親戚たちの反応を見て、話を広げないこともひとつの意思表示なのだと感じました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














