「要は金が欲しいんだろ!」バイキングで妻の服を汚された男性に怒鳴る父親。だが、スタッフが周囲の客に確認した結果
夕食会場で起きた突然の出来事
母と姉と旅行に出かけたときのことです。
宿泊先のホテルでバイキング形式の夕食を楽しんでいました。
会場は自由席で、ひと足先に席へ戻った私は、母と姉を待っていました。
そのとき、近くのテーブルに年配のご夫婦がやってきました。
奥様は通路側に立ち、椅子の背に手をかけていました。
そこへ、浴衣姿の女性が横から歩いてきたのです。
次の瞬間、女性が持っていたトレーが奥様にぶつかり、飲み物と料理が服にかかってしまいました。
「あっ……!」
驚いた奥様が自分の服を見下ろします。
女性も一度は振り返りました。
しかし、汚れた服を見ても謝ることなく、そのまま家族の待つテーブルへ戻っていったのです。
私は思わず目を疑いました。
ご主人は慌てておしぼりを手に取り、奥様の服を押さえていました。
その間も、女性のテーブルからは楽しそうな笑い声が聞こえてきます。
やがて、ご主人は女性のいるテーブルへ向かいました。
謝罪を求めた夫婦に返ってきた言葉
「すみません。さっき、妻にぶつかりましたよね。服が汚れてしまって…」
ご主人が声をかけても、浴衣姿の女性は目を合わせようとしません。
すると、同じテーブルにいた男性が不機嫌そうに顔を上げました。
「何だよ。うちの娘が何かしたって言うのか?」
「いや、トレーがぶつかって、料理もかかったんです。何も言わずに行かれたので……」
ご主人は落ち着いて事情を説明しました。
ところが、娘の父親らしい男性は椅子ごと向き直り、突然声を荒らげたのです。
「要は金が欲しいんだろ!」
あまりの言葉に、私は耳を疑いました。
ご主人はただ、服を汚したことについて話をしているだけです。それなのに、なぜお金の話になるのでしょうか。
周囲のテーブルでも食事の手を止め、そちらを見る人がいました。
そんな騒ぎの中、制服姿の男性スタッフがやってきました。
スタッフはご夫婦の状況を確認し、近くにいたお客さんにも順番に事情を聞いていきました。
私にも声がかかったので、見たことをそのまま話しました。
「私も見ていました。トレーが当たって、料理と飲み物が服にかかったんです。でも、女性は何も言わずに戻っていきました」
スタッフは私の話を聞き終えると、女性たちのテーブルへ向かいました。
スタッフの説明に黙り込んだ父親
奥様もご主人のそばに来て、スタッフの話を聞いていました。
スタッフは落ち着いた声で、家族に向かって話し始めました。
「近くのお客様からもお話を伺いました」
父親がスタッフの顔を見上げます。
「こちらのお客様の服に、お料理とお飲み物がかかってしまったと伺っています。まずは、ひと言おわびをお願いできますでしょうか」
さらに、クリーニングについてはホテルで手配すると説明しました。
父親は何か言いかけましたが、結局それ以上は何も言いませんでした。先ほどまでの大きな声は消え、皿に視線を落としています。
すると、浴衣姿の女性がゆっくりと席を立ち、ご夫婦に向かって頭を下げました。
「……すみませんでした」
ようやく聞こえた謝罪の言葉でした。
ご夫婦はスタッフに付き添われ、着替えに向かいました。
その後、母と姉が席に戻ってきたので、私は今見た出来事を小声で話しました。
「えっ、そんなことがあったの?」
驚いた母は、話を聞き終えると静かに言いました。
「ちゃんと見てる人がいてよかったね」
母の言葉に、私もうなずきました。
浴衣姿の女性とその家族は、先ほどまでとは打って変わって、静かに食事を続けていました。
その場にいた人たちの話をきちんと聞き、落ち着いて対応してくれたスタッフの姿が、今でも心に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














