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2026.06.04(Thu)

「今、ここでやるの?」混雑している車内でメイク直しする女性。だが、別の女性の正論で態度が一変

「今、ここでやるの?」混雑している車内でメイク直しする女性。だが、別の女性の正論で態度が一変

ファンデが漂う満員電車

帰宅ラッシュの電車は人で溢れていた。吊り革は全部埋まり、乗客が互いの肩に触れそうな密度の中で立っていた。

体を斜めにしないとバランスが保てないほどの混み具合だった。

そのとき、近くに立つ女性がバッグからポーチを取り出した。

パウダーファンデーションのコンパクトを開き、ブラシを走らせ始めた。

細かい粉が漂い始めた。換気のきかない密閉された空間で、それは思いのほか広がった。

「今、ここでやるの?」

鼻の奥に引っかかるような感覚があり、隣の乗客が口元を押さえた。しばらくして、もうひとりが続けて咳き込んだ。乾いた咳が車内に響いても、女性は手を止めなかった。

コンパクトのブラシが、チークへ移り、リップへ移る。ひとつひとつ丁寧に、周囲を気にする様子がまったくなかった。

咳をした乗客のほうを一瞬見たようにも思えたが、それだけだった。

周囲の乗客たちも、声を出せずにいた。誰もが不快に思いながら、見て見ぬふりをしていた。それが「普通」の反応だった。わたし自身もそうだった。混んだ電車で、見知らぬ相手に注意するのは、やはりハードルが高かった。

若い女性が静かに放った言葉

少し離れた場所から、若い女性が向きを変えた。鮮やかなビビッドカラーのファッションに身を包んだ、おそらく20代。その人がすっと背筋を伸ばし、落ち着いた口調でこう言った。

「電車でのメイク直しは迷惑ですよ」

車内が静まった。大げさではなく、周囲の空気がわずかに止まったような感覚があった。

メイクをしていた女性は手を止め、若い女性のほうを見た。表情に何か言い返そうとする動きが見えた。

けれど、その視線を追うように周囲の乗客がひとり、またひとりとうなずいていた。咳き込んでいた人も、何も言わずに立っていた人も、誰も若い女性の言葉を否定しなかった。

孤立した状況を感じ取ったのだろう。女性はコンパクトをゆっくりとしまい、次の駅でそのまま降りていった。

言えなかった一言を、見知らぬ誰かが代わりに言ってくれた。あの帰り道は、妙に気持ちが軽かった。

「迷惑をかけているかもしれない」という発想がある人なら、誰かにそっと告げられただけで気づける。そこに届くかどうかが、全部だと思う。あの若い女性は、その届け方を知っていた。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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