「こっちは中の下かな」従業員に点数をつける店長。だが、新人の無垢な質問で、その場の空気が凍りついた
片方にだけ向けられる視線
以前勤めていた雑貨店に、毎回のように女性スタッフを評価する店長がいた。
男性スタッフには終始フレンドリーで、距離の取り方も自然だった。一方、女性スタッフのそばに立つときだけ空気が変わった。
目線が細くなり、決まって誰かの顔や雰囲気に対する品評が始まった。
「かわいい子は得だよねぇ」「こっちは中の下かな」
笑いながら言う分、反論しにくかった。
褒められても喜べなかった。誰かが落とされている空気の中では、どんな言葉も素直に受け取れなかった。
店長は「サバサバした性格」を自認していた。
しかしその立場から一方的に人を採点し続けるのは、もはやモラハラに近かった。
週に何度もそれが続いた。女性スタッフはみんな慣れているように見えたが、それは諦めに近い慣れだったと思う。
誰も傷ついていないわけではなかった。ただ、言える場所がなかった。
品評会の日に新入りが来た
その日、新しくアルバイトを始めた男の子が初めてシフトに入っていた。
明るくて素直で、先輩スタッフにも自分から話しかけてすんなり場に馴染んだ。
店長はすぐに目をつけた。いつものように距離を縮め、今度は女性スタッフの評価を語り始めた。
バックヤードの棚の前で、いつもと同じ調子で話していた。
「あの子はまあまあ」「こっちは中の下くらい」
新入りはニコニコしながら聞いていた。ところが少し間を置いてから、何の含みもなさそうに首をかしげてこう言った。
「店長って自分では何点ですか?」
店長が固まった。言葉に詰まって、顔がみるみる強張っていく。
「えっと」「んー」と何かを言おうとしたが、まとまらなかった。
笑ってごまかすような間が続いた後、在庫を見てくると言ってその場から離れた。それからしばらく戻ってこなかった。表情は完全に凍りついていた。
素直な疑問が照らしたもの
新入りに悪意はなかったと思う。ただ、思ったことをそのまま聞いただけだった。
だからこそ、その一言は鋭かった。採点する側がいつも採点台の外に座っている。
それを当たり前のように続けていた品評会が、そこで初めて止まった。
あの夕方、帰り際に先輩スタッフが「今日の子、やるね」とこっそり笑っていた。ずっと誰も声に出せなかったことが、まったく別の角度からひっくり返された日だった。すっきりしたとは少し違う。ただ、軽くなった気はした。
誰もあとを追って何かを言うことはなかった。でも場の空気は、じわりと凍りついたままだった。ああいう瞬間は、案外ずっと長く残るものだと今も思う。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














