「また怒られるやつ?」数万円の趣味の道具を買った夫。妻が見せた一枚の紙と本当の気持ちとは
テーブルの真ん中に置いた、一枚の紙
土曜の夜、子どもを寝かせてから、私はテーブルの真ん中に紙を一枚置いた。家賃や食費、子どもにかかるお金など、1か月ぶんの支出を書き出したものだった。
きっかけは、その週の初めに玄関へ届いた箱だった。中身は、夫が前から欲しがっていた数万円の趣味の道具。
生活費の口座から買ったものではなく、夫が自分で使えるお金から出したものだった。
だから、買ったこと自体を責めたいわけではなかった。
ただ、子どもが生まれてから、毎月少しずつ貯金すると決めていた私は、洋服を後回しにしたり、美容院へ行く間隔を延ばしたりしていた。
そんな横で大きな箱を嬉しそうに開ける夫を見ていると、どうしても引っかかるものがあった。
「私ばっかり我慢してる気がして…。たぶん、それが嫌だった」
そう話すと、夫は少し困った顔をした。
「でも、生活費から出したわけじゃないよ。自分の分から買ったんだけど」
「分かってる。買うなって言いたいわけじゃないの」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
うまく答えられず、その日は話を終えた。
言い合うより、一度数字を一緒に見たほうがいい。そう思って作ったのが、目の前の紙だった。
「また怒られるやつ?」
夫が少し身構えたので、私は首を振った。
「怒りたいんじゃないよ。一回、一緒に見てほしいだけ」
紙の上で、夫の指が何度も止まった
夫は紙を手前に引き寄せ、上から指で追っていった。
家賃、光熱費、通信費、保険。
「こうやって並べると、結構あるな」
次に食費と日用品の欄で指が止まった。
「食費って、こんなにかかってた?」
「今月はちょっと高いよ。子どもの分も増えてきたし」
「ああ…そっか」
最後に、毎月貯めると決めている額を見ると、夫はしばらく黙った。
「思ったより出ていくんだな」
「うん。だから私は、ここを減らしたくないって思ってた」
私が貯金の欄を指すと、夫は紙から顔を上げた。
「服とか美容院も、そのために我慢してたの?」
「絶対そうしなきゃいけないわけじゃないんだけどね。なんとなく、自分が使ったら減る気がして」
夫は少し考えてから言った。
「それ、俺は全然知らなかった」
「私も言ってなかったからね」
話してみて分かったのは、私たちは生活費や貯金の額は決めていても、それぞれが自由に使っていいお金については、きちんと話したことがなかったということだった。
翌日、母に電話でその話をすると、こんなふうに言われた。
「あなたの分も決めたら?自分だけずっと我慢してたら、そりゃ嫌になるよ」
その夜、夫ともう一度話し、それぞれが気兼ねなく使っていい額を決めた。数万円するような買い物をするときは、先に一言話すことにもした。
紙は今も冷蔵庫に貼ってある。
次の週末、出かけようとしていた夫がその紙を見て、玄関から振り返った。
「この前決めた自分の分、ちゃんと使っていいんだからさ。美容院、行ってきたら?」
夫を責めたかったわけでも、買い物をやめさせたかったわけでもない。ただ、お互いが何を当たり前だと思っていたのか、ようやく同じテーブルで話せた夜だった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














