「ソファー席に替えてって言ってるんだけど」店員を呼び止めた女性。希望の席へ移った直後、向かいの椅子に足を乗せて店長が声をかけた
2度くり返された「替えて」
その日は仕事の合間に、ひとりで昼ごはんを食べていた。
カウンターに近い席でスープを飲んでいると、40代くらいの女性客が入ってきた。
店員さんが二人席へ案内すると、女性は席を見るなり少し顔をしかめた。
「この席、ちょっと落ち着かないの。ソファー席に替えて」
「空いている席を確認しますので、少々お待ちいただけますか」
店員さんが離れようとすると、女性はすぐに呼び止めた。
「ねえ、ソファー席に替えてって言ってるんだけど」
「はい、ただいま確認しますね」
少しして、女性は奥の席へ案内された。
そこは壁側が長いソファーになっていて、テーブルを挟んだ向かい側に椅子が置かれている席だった。
女性はソファーに腰を下ろすと靴を脱ぎ、向かいの椅子に足を乗せた。
そのまま携帯電話を見ながら、運ばれてきたランチを食べ始めた。
近くの席にいた人が一度そちらを見たものの、すぐに視線を戻した。私も気にはなったが、自分から注意する勇気はなかった。
店長が静かに声をかけた
しばらくすると、先ほどの店員さんがレジの近くにいた男性のところへ向かった。
「店長、少しいいですか」
その声が聞こえ、私はそこで初めて、その男性が店長なのだと分かった。
店員さんは小さな声で何かを伝えながら、女性のいる席へ視線を向けた。
店長はうなずくと、そのまま奥へ歩いていった。
そして女性のそばで少し腰をかがめ、穏やかな声で話しかけた。
「お食事中に申し訳ありません。恐れ入りますが、足を椅子から下ろしていただけますか」
女性は一瞬だけ顔を上げたが、何も言わずに携帯電話へ視線を戻した。
店長は少し間を置いてから、もう一度声をかけた。
「すみません。こちらの椅子はほかのお客様も使われますので、ご協力をお願いできますか」
すると女性は店長を見て、少し不満そうな顔をした。
「…分かりました」
そう言って足を下ろし、靴を履いた。そのあとは特に何も言わず、残りの食事を続けていた。
食事を終えると、女性は会計を済ませて店を出ていった。
店長は女性が使っていた席を確認し、清掃用の布で向かいの椅子の座面を丁寧に拭いた。
そのあと、先ほどの店員さんのところへ戻ると、やわらかい声で言った。
「ああいうときは、無理して自分で言わなくていいからね。困ったら呼んで」
店員さんはほっとしたように息をついた。
「ありがとうございます。ちょっと声をかけづらくて…」
「うん、分かるよ」
二人は短く言葉を交わすと、それぞれの持ち場へ戻っていった。
気づけば店内には、いつもの食器の音と話し声が戻っていた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














