「ペット用の切符は買ったんだから」電車でケースから犬を出した女性。だが、駅員さんがケースに戻すよう伝えた理由
ケースから犬を出した女性
平日の昼過ぎ、僕は外回りを終えて会社へ戻る電車に乗っていた。
昼の混雑が落ち着いた時間で、車内には空席も目立っていた。
途中の駅から、中年の女性が小型犬用のキャリーを持って乗ってきた。
僕から少し離れた席に座ると、しばらくしてキャリーを開け、中から白い小型犬を出して膝の上に抱いた。
家で犬を飼っている僕は、思わずそちらを見た。
犬はおとなしくしていたが、女性の隣に座っていた年配の女性は、少し体を離すようにして窓のほうを向いていた。
すると近くに座っていた会社員風の男性が、ためらいながら声をかけた。
「すみません。その子、ケースから出していて大丈夫なんですか?」
女性は少し驚いた顔をして、手元のきっぷを見せた。
「ペット用の切符は買ったんだから、大丈夫でしょう」
「いや、切符とは別に、乗っている間はケースに入れておく決まりだったと思うんですけど…」
男性がそう返すと、女性は犬を抱き直した。
「でも、ペット用の切符は買ったんだから。ちゃんとお金も払ってますよ」
声は少し強くなっていた。男性もそれ以上は言わず、困ったように視線をそらした。
僕も声をかけるべきか迷ったが、このまま乗客同士で言い合いになるのも気になった。
「きっぷをお持ちでも」と駅員さんが伝えた
次の駅で、特急の通過待ちのため数分停車するというアナウンスが流れた。
僕はホームへ降り、近くにいた駅員さんに声をかけた。
「すみません。車内で犬をケースから出して抱いている方がいるんですが……」
駅員さんは「分かりました。確認します」と答えた。僕もそのあとについて車内へ戻った。
駅員さんは女性の前まで行き、足元のキャリーを確認してから穏やかに話しかけた。
「お客さま、申し訳ありません。ワンちゃんをケースの中に戻していただけますか」
女性はすぐにきっぷを差し出した。
「でも、これ買ってますよ。駅でちゃんと払いました」
「はい、きっぷをお持ちなのは分かります。ただ、ご乗車中はケースから出さず、全身を中に入れていただく決まりなんです」
女性は犬の顔を見ながら、納得できない様子で聞き返した。
「抱いているだけでも駄目なんですか?この子、おとなしいんですけど」
「おとなしいワンちゃんでも同じお願いをしています。犬が苦手なお客さまもいらっしゃいますので、ご協力をお願いします」
駅員さんは声を荒らげることなく、静かに伝えた。
女性は一度周囲を見回してから、小さく息をついた。
「…分かりました」
そう言って足元のキャリーを開き、犬をそっと中へ戻した。きちんと収まったことを確かめてから扉を閉める。
駅員さんが「ありがとうございます」と頭を下げると、女性も何も言わず小さく会釈した。
隣にいた年配の女性も、少しほっとしたように座り直していた。
会社へ戻ってから、同じく犬を飼っている同僚にこの話をした。
「切符を買っていれば大丈夫だと思ってたのかもしれないね」
「俺も犬を飼ってなかったら、細かい決まりまでは知らなかったかも」
そう答えながら、僕も自分の犬を電車に乗せるときは改めて気をつけようと思った。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














