「まだ結婚しないのか?」正月になると毎回聞いてくる叔父→従兄弟が注意してくれたが、帰り際の叔父の言葉に衝撃を受けた
座敷の空気を変えた一言
父方の実家に親戚が集まる正月の座敷で、僕の隣に座っていた従兄弟が、お猪口を置きながらさらりと言った。
「そういうの今どき失礼だよ」
相手は、向かいに座る父の弟。
叔父はその数分前、僕に向かっていつもの決まり文句「まだ結婚しないのか?」と投げてきたところだった。
30代に入ってから、毎年正月のこの座敷で同じ問いを浴びている。
料理の話や仕事の話のあと、決め台詞のように繰り出されてくるのだ。
父も母も笑って聞き流すだけで、ずっと止めには入ってもらえなかった。
その流れに、初めて横から誰かが割って入ってくれた瞬間だった。
声は決して大きくないのに、座敷の空気が一瞬で静まり返った。
場が動かなくなった数分間
叔父は何も返さなかった。苦笑いのまま、おせちに箸を伸ばし、テレビの音だけが妙に響く時間が流れる。
その後、誰もその話題に触れようとしなかった。
年配の従兄弟夫婦が孫の写真を回し始め、自然と話題が切り替わっていく。
僕は黙って従兄弟にお猪口をかかげ、心の中だけで頭を下げた。
三十数年通った正月で、家族の誰かが代わりに言葉にしてくれたのは初めてだった。
廊下で背筋が冷えた瞬間
そろそろ帰ろうと、コートを取りに奥の間へ戻ったとき、中庭側の襖の向こうから声が漏れていた。
聞き覚えのある低めの声だ。
叔父だった。今度は、別の親戚と差しで話しているらしい。
「で、お宅のところはどうなの。結婚の話は出てるの」
口調も間も、さっき僕に向けてきたものと寸分違わなかった。
指先がすっと冷えて、その場で立ち止まってしまった。
耳をすませると、相手も曖昧に答えを濁しているのが分かった。叔父はそれを意に介さず、同じ抑揚で次の質問を重ねていく。座敷で従兄弟に止められたばかりの一連の流れが、何ひとつ届いていなかった。
反省も気まずさもないまま、来年もまた同じ顔で同じ問いを繰り返すのだろう。咎める声があれほど軽く上書きされる事実に、しばらく襖の前から動けなかった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














