「やってみる価値あるな」評価も判断も他人任せだった自分→自分の企画が初めて会議を通った日に取り戻した手応え
会議資料を抱えて入った朝の一室
その日の朝、僕は普段より三十分早く出社して、会議室の前で資料を抱え直していました。
手元には、休日に練り直した提案書。業務の段取りを少し組み替えて、現場の手数を減らす工夫を書き込んだものです。普段は決まった作業を回すだけの自分が、こんな大それた紙を出していいものか、正直、迷いもありました。
(出さなければ、何も変わらないままだ)
仕事の責任は重いのに、肝心な判断は上の人任せ。途中まで詰めても、最後の決断と評価は自分の手を離れていく。そんな日々に、心のどこかで折り合いがつかなくなっていたんです。
そう自分に言い聞かせて、扉を開けたのでした。
部長の腕組みと、机に落ちた一言
進捗報告がひと通り終わったあと、僕はおずおずと手を挙げて、温めていた提案を切り出しました。
要点を説明している間、部長は腕を組んだまま、ほとんど表情を変えません。差し戻されるか、検討事項として後回しにされるか。胃のあたりがきゅっと縮みました。
説明を終え、口を閉じた瞬間、部長が浅く頷きながら、こう口にしたんです。
「やってみる価値あるな」
続けて、「来週から動かそう」と短く付け加えてくれました。
そばで聞いていた中堅の主任が、目を丸くしてこちらを見ます。会議室を出るとき、肩を軽く叩かれました。
「思いきった提案、よかったよ」
翌週、本当に小規模なプロジェクトとして稼働が始まり、僕が進行役を任されることになりました。
やり方の細部はこちらに任せると、部長は短く言い切ってくれたんです。
その瞬間、長く乾いていた心に、小さな水滴が落ちる感覚がありました。
自分で決めて、自分で動かす日
関係部署に話を通し、現場で困っている人の声を拾い、段取りを組み替えていく。
判断の場面で迷っても、自分の判断でいいと言われた範囲は、自分の頭で決めて進めていいんです。
これまで、責任ばかり重く感じて、決定権は上にあると諦めていました。
差し戻しの多さに気力を削られて、提案を口にする前から飲み込む癖がついていたんです。
けれど、提案が通り、形になって動き始めると、評価される前から自分の中に小さな手応えが残ります。
初日の夕方、現場の担当者から「これ、ずっと変えてほしかったんですよ」と声をかけられました。短い一言が、思いのほか胸の奥まで沁みてきます。
誰かの作業がほんの少し楽になる、そのために自分が動いている実感が、ようやく手の中に残ったんです。
仕事って、こういう瞬間のためにやるものなんだな。
長く抱えていた、釈然としない重さがすっと軽くなった、そんな日だったのでした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














