「なんで午後に入れないの」前日の指示を覆し私を叱った院長夫人。日々続く理不尽に、退職を決意した話
同じ人にだけ柔らかい声をかけるリーダー
二十代で勤め始めた歯科医院では、受付と歯科助手を兼ねるのが私の仕事でした。
実質的に医院をまとめていたのは、院長夫人です。
シフトも、休憩の入り方も、予約の取り方も、すべて夫人の判断で動いていました。
働き始めてしばらくして、私はひとつの違和感に気づきます。
同じ夫人のはずなのに、声をかける相手によって、表情も声色もまるで別人のように変わるのです。
衛生士の先輩たちに対しては、声がふんわりと柔らかくなり、無理を言ってもにこやか。
一方で受付や歯科助手の私たちに向けると、口数がぐっと減って、視線も冷たく落ちる。
「衛生士さんには優しいのに」
同じ歯科助手の同期が、休憩室で湯のみを抱えながら、ぼそりと漏らした一言でした。
声を出して同意するのが少し怖くて、私はただ頷くだけにとどめました。
それでも、二人で抱えていた違和感はぴったり同じ形をしていたと思います。
気分次第で逆になる指示と続いた休憩室の不満
気分屋というだけなら、合わせて働き方を変えれば済むのかもしれません。
けれど、その日の機嫌で指示そのものまで反対方向にひっくり返ってしまうのが、いちばんこたえました。
スケーリングの予約は、衛生士の先輩が手すきになる午前中に詰めてほしい。
最初にそう言われた私は、その通りに予約表を組み立てました。
けれど何日かして、夫人がため息混じりに私の手元を覗き込んできました。
「なんで午後に入れないの」
指示が変わったことを認めず、まるで最初から私が間違えていたような口ぶりでした。
バランスよく午後にも振っておくのが当然でしょう、と頭ごなしの声が続きます。
(え、午前に詰めてって言ったの、あなたなのに)
言い返すことはできませんでした。
「すみません、組み直します」と頭を下げる以外、その場で選べる返事はありませんでした。
休憩時間も油断できません。衛生士の先輩がいない時間帯になると、夫人は私の隣に座って、別の同僚への不満を一時間近く話し続けるのです。
お弁当のふたを開けたまま、相槌だけ打って三十分が過ぎていく日もありました。
夜、家に帰ってから「明日も同じ顔で出勤するんだ」と思うと、息が浅くなる感覚が抜けなくなりました。
これ以上は無理だと判断して、私は退職を選んだのです。
辞めてから知ったのは、私が抜けたあとも、また新しい人が入っては短期間で辞めていく流れが続いている、ということでした。
あの時の先輩の言葉は、こういう意味だったんだと、何年経っても胸の奥に重く残っています。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














