「全部食べたけど何か?」作り置きしていたカレーを全部食べた夫。だが、妻が冷蔵庫に貼った1枚の紙で状況が一変
開けた鍋は空だった
週末に料理を作り置きして、平日を乗り切る。それが我が家のやり方だった。仕事から疲れて帰り、そこから夕飯を一から作るのはさすがにこたえる。
だから休みのうちにまとめて仕込んでおくのが、長年の知恵だった。その日曜も、私は米を3合炊き、大鍋でカレーを8皿分こしらえた。これで数日は台所に立たずに済む、そう思っていた。
けれど水曜の夜、鍋の蓋を開けると底がのぞいていた。8皿あったはずのカレーも、3合の白米も、3日ですっかり消えている。
念のため取り分けておいた容器まで、空っぽだった。洗っていない鍋がシンクに転がり、こびりついたカレーの跡だけが、確かに大量にあったことを物語っていた。
「ねえ、カレー、まさか全部食べたの?」
テレビを見ていた夫は、こちらも見ずに言った。
「全部食べたけど何か?」
悪びれる様子もない。おいしかったんだから仕方ないだろう、という顔だった。
「せめて半分は、残しておいてくれたら」
「腹が減ってたんだから、しょうがないだろ」
「明日からの分が、なくなっちゃったじゃない」
3合の米と8皿のカレーを一人で3日でたいらげておいて、まるで他人事だった。
冷蔵庫に貼った1枚
怒鳴っても、この人には響かない。長年連れ添って、それはよく分かっていた。だから私は、別のやり方を選んだ。
買い物のレシートを集めて電卓を叩き、この数日でかかった食費を1枚の紙に書き出した。米、肉、野菜、ルー。どれも家族が数日かけて食べるはずの食材で、特売を狙って一円単位で切り詰めた金額が、まるごと一人のお腹に消えた計算だった。
合計の数字は、外食が何度もできるほどにふくらんでいた。その紙を、冷蔵庫の扉に大きく貼った。
夕方、帰ってきた娘がその紙を見て、素っ頓狂な声をあげた。
「え、これ3日分の食費?お父さんが一人で食べちゃったってこと?」
「そうよ。全部ね」
娘のあきれ声に、夫がのそりとやってきた。紙の金額を目で追ううちに、さっきまでの余裕が抜けていく。
「……こんなに、かかってたのか」
「家族の分まで、あなたのお腹に入ってたの」
夫は青ざめて、それきり黙り込んだ。
翌日から、夫はその紙の隣に、自分が食べた分を書き足すようになった。何をどれだけ口にしたか、自分で記録するようになったのだ。
空の鍋を前に平然としていた人が、今では一皿よそうたびに紙をちらりと見る。
「これ、ちゃんと効いてるみたいね」
娘と顔を見合わせて、思わず笑ってしまった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














