「床を踏むたび心臓に響くのよ」苦情を入れる下階の女性。だが、隣に住む男性の正論で豹変
実家に泊まった日も届いた苦情
下の階から足音の苦情を言われ始めたのは、防音対策を万全にして入居した直後だった。防音等級の高い床材を選んだうえに、カーペットも防音シートも重ねて敷いた。それでも呼び出しは止まらなかった。週に一度は玄関先に立たされ、頭を下げ続けた。
私は子どもを叱ってばかりの自分が嫌になり、平日は実家に寝泊まりするようになった。休日もできるだけ外へ連れ出し、家を空ける日を増やせば、さすがに苦情も減るだろうと思っていた。それだけ気を張って暮らしても、状況は少しも変わらなかった。
ところが、家族そろって実家に泊まった翌日も、下の階の女性はインターホンを鳴らした。青い顔で、彼女は訴えた。
「床を踏むたび心臓に響くのよ」
「昨日は家族みんな、実家に泊まっていたんです」
「そんなはずないでしょう。ずっと上から音がしていたもの」
「これ以上、どうしろって言うんですか」
マンションは四方から音が響く。それでも彼女は聞く耳を持たなかった。私が声を張ると、さすがに気圧されたのか、口をつぐんでそのまま去っていった。
隣の男性が下した正論
埒が明かないと感じた私は、まず管理会社に相談した。玄関の防犯カメラの記録を見てもらえば、留守だった日まで苦情が来ていると分かるはずだった。
担当者は玄関のカメラの映像を頭から確認し、少し声を落とした。
「記録では、あの日はどなたも戻られていませんね」
不在の裏付けは取れた。だが、事態を本当に動かしたのは別の人だった。
事情を話した隣室の男性が、下の階の女性と長年の顔見知りだったのだ。彼はその足で階下へ下りていき、私も少し後ろから付いていった。
「あの家族は静かなもんだ。いい加減にしなよ」
「だって、上から音が……」
「その音はお宅の家族じゃない。何か気になることがあったら、あの家じゃなく俺に言え」
顔見知りの男性から正面切って諭され、彼女はぐうの音も出なかった。口を開きかけては、また閉じる。そのまま目を伏せ、逃げるように自分の部屋へ戻っていった。
あれほど毎週のように鳴らしていたインターホンが、その日を境にぴたりと止まった。
数日後、廊下で彼女とすれ違った。あの強気はどこへ消えたのか、私を見るなり肩をすぼめ、目を伏せて足早に去っていく。
「あら、こんにちは」
蚊の鳴くような声で会釈だけ寄こすと、彼女は逃げるように角を曲がっていった。私を見下ろして責め立てていた人が、今はこちらの顔色をうかがっている。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














