「3号室のゴミ、分別が雑なのよ」住人のゴミ袋を開けて中身を確認した住人、町内会長が告げた一言に凍りついた
部屋番号ごと言いふらす女
私が暮らすアパートで、同じ棟の女性はゴミ出しのマナーにやたらと厳しかった。最初は真面目な人だと思っていた。その印象が崩れたのは、ある出来事がきっかけだった。
ゴミ置き場に「分別を徹底してください」と張り紙が出た朝、彼女は集積所にしゃがみ込み、他人のゴミ袋を一つずつ開けて中を検分していたのだ。
「3号室のゴミ、分別が雑なのよ」
通りかかった住人をつかまえて、彼女は得意げに言った。部屋番号まで名指しで、誰がどんな捨て方をしたかをあげつらう。
「それ、勝手に開けたんですか」
「ちゃんと分別できてるか、見てあげてるだけよ」
悪いことをしている自覚は、みじんもないようだった。むしろ、正しいことをしてやっているとでも言いたげな顔だ。
数日後には、私の袋にも「出す曜日が違います」と付箋が貼られていた。調べてみれば、収集日は合っている。前の晩に出したのが、彼女の気に障っただけらしかった。こうなると、いつ自分の名前があげつらわれるかと、ゴミを出すたびに身構えてしまう。
「あの人、部屋番号で呼んでくるのよね」
「うちなんて、何を捨てたか全部把握されてた」
住人同士で顔を寄せ、ひそひそと言い合うのが日課になっていた。監視されているようで、気の休まる時がなかった。
町内会長が告げた一言
見かねた住人の一人が、地域の町内会長に相談を持ちかけた。ちょうど回覧板を届けに来た町内会長は、集積所で袋を開けている彼女を、その目で見てしまった。
「あなた、それは他人の家のものですよ」
穏やかだが、有無を言わせない声だった。彼女は「分別の確認を」と言い返そうとする。
「確認と、勝手に開けて中身を言いふらすのは、まったく別の話です」
町内会長は静かに、しかしきっぱりと続けた。
「これ以上続けるなら、次は正式な問題として扱いますよ」
その一言に、彼女はぴたりと動きを止めた。開きかけた袋を握ったまま、顔がみるみるこわばっていく。いつもの勢いは、どこにもなかった。
周りを見れば、いつの間にか何人もの住人が集まっている。「ずっと気味が悪かったんです」と誰かが漏らすと、うなずく人が次々に続いた。四方から向けられる視線に、彼女は袋を取り落とし、その場に凍りついたように立ち尽くした。
「……もう、しないわよ」
やっと絞り出した声は、震えていた。それから彼女がゴミ置き場で袋を開けることは、二度となかった。住人と鉢合わせても、目を伏せて足早に立ち去るだけだ。人の捨て方を裁いて回っていた人が、今度は自分が住人の目を避けている。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














