「無理だ、交代。はい」と泣き出した子供を押し付ける夫。丸一日、ワンオペをお願いしてみると
分かんない、の一点張り
一歳の子どもには、眠くなる前のサインがある。あくびが増え、ぐずり出す。毎日見ていれば、そのタイミングは手に取るようにわかった。
ここで寝かせれば、すっと寝てくれるのだ。
「そろそろ寝かせよう。今がちょうどいいよ」
休日の午後、私は夫にそう伝えた。けれど夫は、寝転んだまま動こうとしない。
「そろそろなんて分かんないって」
「見てたら分かるよ。ほら、目こすってるでしょ」
「俺がやっても寝ないし。眠くなったら勝手に寝るって」
「勝手に寝ないから、抱っこしてるんだよ」
「まあまあ、もうちょっと様子見ようよ」
結局、波を逃した子どもは火がついたように泣き出した。夫はしぶしぶあやすが、数分で音を上げる。
「無理だ、交代。はい」
泣きじゃくる子を押し付けられ、私はため息をのみ込んだ。先回りして動くという発想が、この人にはまるでないのだ。
初めての丸一日
そこで私は、一日まるごと家を空けてみることにした。美容院と買い物で、朝から夕方まで。子どもは夫に任せる。
「一日くらい、なんとかなるよね?」
「もちろん。任せとけって」
「お昼寝のタイミング、気をつけてね」
「はいはい、分かってるって」
軽い調子で送り出された私は、半信半疑のまま出かけた。久しぶりに自分のためだけに使える時間は、想像以上に心地よかった。
電話もメッセージも、一度も鳴らない。きっとうまくやっているのだろう。そう思い込んでいた。
静まり返った部屋
帰宅して玄関を開けた瞬間、家の中はしんと静まり返っていた。
電気もつけず、薄暗い。嫌な予感がした。
リビングは見事に荒れていた。おもちゃと衣類が床を覆い、ミルクの缶やタオルが散らばっている。その中心で夫が泣き疲れた子を抱いたまま、抜け殻のように固まっていた。
憔悴しきった顔だった。
「おかえり……」
目が合った夫は、力なく視線を落とした。それから、降参するように声を絞り出した。
「お前が言ってた『そろそろ』、本当にあったわ。完全に見落として、ずっと泣かれた」
「だから言ったでしょう」
「ほんとだよ。一回タイミング外したら、もう何やっても泣きやまなくて。参った」
いつもの余裕の表情は、どこにもなかった。翌朝から、夫は子どもが目をこすり始めると「そろそろかも」と先回りして抱き上げるようになった。
「今日は俺が寝かしつける」
ぎこちなく子をあやす後ろ姿は、まだ危なっかしい。それでも、確かに変わっていた。
「上手くなったね」
そう言うと、夫はばつが悪そうに笑って、子どもを抱え直した。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














