「自分で考えろ。それもできないのか」といつも怒る夫。だが、調停の席で再生した録音に声を失った瞬間
無視で支配する人
付き合っていた頃も、新婚の頃も、夫はやわらかく笑う人だった。その笑顔が消えるのに、そう時間はかからなかった。
少しでも気に入らないことがあると、夫は何日も私を無視した。話しかけても、目すら合わせない。理由を尋ねた時だけ、口を開く。
「お前がバカだから悪い」
鼻で笑いながら、夫はそう言い放った。
「いつになったら、まともになるんだ」
「ごめんなさい、どうしたら許してくれるの」
「自分で考えろ。それもできないのか」
謝っても、何が悪いのかは決して教えてくれない。
けれど一歩外に出れば、夫は別人だ。
近所でも職場でも「いい旦那さん」で通っている。だから私は、誰に打ち明けることもできなかった。
気づいてから
これはもう、ただの夫婦喧嘩じゃない。そう気づいた時、私は離婚を決めた。
表向きは、何も変わらない妻を演じ続けた。その裏で、私は淡々と記録を集めていく。スマートフォンに残した録音、日付つきの日記、毎日少しずつ、こっそりと。
「お前なんか、誰も必要としてないんだよ」
「……うん、わかった」
言い返さず、私はただ穏やかに受け流した。怒りも悲しみも、すべて記録に変えると決めていたから。録音のランプが、静かに灯っていた。
「なんだその態度。文句あるのか」
「ないよ。なんにも」
夫は、私が言い返さなくなったことを、自分が勝ったからだと思い込んでいた。
本当の理由には、最後まで気づかなかった。私は心の中で、また一日分を数えていた。
再生された声
離婚を告げても、夫は鼻で笑うだけだった。
「お前にそんな度胸あるわけない」と、本気にもしていない。
調停の場でも、夫は穏やかに振る舞った。落ち着いた声で、私の方が不安定なのだと話し始める。
「ええ、私は妻を支えてきたつもりです」
その時、調停の場で一つの音声が再生された。家の中で夫が吐いた、あの言葉たちだ。
夫の表情が、見る間にこわばっていく。自分の声が流れる間、口を半開きにしたまま固まった。
「これは、その、状況が」
続けようとした声は、途中で完全に途切れた。ついさっきの落ち着きはらった口調は、もう出てこない。
同席した人たちの視線が、ゆっくりと夫に注がれる。
「全部、本当にあったことです」
夫は目を伏せ、それきり何も言えなかった。離婚は、私の望む形で決まった。窓から朝の光が差す台所で、今日もひとり、好きな音楽を流している。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














