「いちいち抜くの面倒なんだけど!」掃除機を壊しかけた妻。だが、数万円のレシートを見せると態度が一変
買い直したばかりの一台
コードレス掃除機を、買い直したばかりだった。前の一台は、充電器に差しっぱなしにしていたせいでバッテリーが劣化し、ある日動かなくなった。
修理見積りは数万円。結局、同じ機種を新しく買った。
「今度のは長く使いたいから、充電終わったら抜こうね」
「はいはい、わかってる」
だから今度は、と私は自分に言い聞かせていた。充電が終わったら、すぐ抜く。
それだけの習慣だ。満充電のまま差し続けると、バッテリーが弱るらしい。
けれど妻にとっては、それが面倒くさいらしい。
「いちいち抜くの面倒なんだけど!」
「面倒でも、それで一台ダメになったじゃない」
「気をつけてるってば。忘れた時だけ言わないでよ」
壁を見れば、いつも差しっぱなし。忘れた時だけ、なんてものではなかった。
それでも口論になるのが嫌で、私はそのたびに黙って自分でプラグを抜いていた。
数万円のレシート
そんな日々が、何週間も続いた。ある休日の朝、また差しっぱなしのプラグを見つけて声をかけると、妻はやっぱり同じことを言った。
「私はちゃんとやってるってば」
私はその朝、何も言い返さなかった。代わりに財布の中から、とっておいた一枚を取り出した。前の掃除機を買い直したときのレシートだ。数万円という数字が、はっきり印字されている。
それを、静かに置いた。
「これ、買い直したときのレシートね」
「なんで今さらそんなの出すの」
「次に壊れたら、これがもう一回かかるよ」
妻は、言い返そうとした。けれど、口を開いたまま固まった。
レシートの金額に目を落とし、二度見する。さっきまでの強気な口調が、すっと引っ込んでいくのがわかった。
「……これ、そんなにしたの」
「うん。だから、頼むよ」
あれだけ「面倒」と言っていた人の声が、急にしぼんでいた。
「……気をつけます」
小さくそう言って、妻はそっとプラグを抜いた。
一行のメモ
それ以来、差しっぱなしのプラグを見ることは、めっきり減った。妻が自分から、こまめに抜くようになったのだ。
数日後、冷蔵庫にメモが貼られているのを見つけた。妻の字で「充電終わったら抜く」と、ただ一行。
「これ、貼ったの?」
「貼っておけば忘れないでしょ」
そう言って、妻は少し得意げだった。叱られて渋々やるのではなく、自分のほうから対策を考えている。その変わりように、思わず笑ってしまった。
「面倒」が口癖だった人が、今は誰よりプラグを気にしている。注意していたのは私のほうだったのに、いつの間にか立場は逆。
あの一枚のレシートが、我が家のささやかな攻防に、静かに決着をつけていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














