「神経質すぎない?たかがペットボトルでしょ」ベランダにゴミを放置する隣人。だが、抗議を続けると
何度拾っても減らないボトル
からん、と乾いた音がして、その朝もベランダに空のペットボトルが転がっていた。
隣の部屋のベランダには、いつも飲み終えたボトルが積み上がっている。風の強い日になると、それがうちの側へ越えてくるのだ。
拾って戻すのを何度か繰り返したあと、廊下で会ったときに一度だけ伝えた。
「ベランダのボトル、うちに飛んでくるみたいなんです」
「風のせいでしょ。うちは悪くないと思うけど」
「いえ、片付けていただければ済む話で」
「神経質すぎない?たかがペットボトルでしょ」
その一言で、直接の話し合いは打ち切られた。私は管理人さんに相談した。
「全体に注意は出しますね。お部屋を名指しはできませんが」
そうして注意書きは掲示されたが、隣のベランダのボトルは減らないままだった。
毎朝ベランダを確認しては、転がっているかどうかで一日の気分が決まる。
小さなことなのに、ずっと胸の奥に引っかかっていた。
写真の束を提出した日
転機は、大型の台風が近づくという予報だった。
飛散すれば危ない。私は転がってきたボトルを、日付を入れて一つひとつ写真に撮りためた。何日に何個と、記録だけが静かに増えていく。
その束を、私は管理会社に持ち込んだ。掲示の注意では動かなかった以上、証拠を添えて出すしかなかった。
「共用部に物を置くのは禁止です」
担当者は写真を一枚ずつめくり、はっきりとそう言った。
「これは個別にご連絡します。撤去いただけなければ、こちらで対応も検討します」
共用部分の保管物は撤去の対象になると、隣の部屋へ個別に文書で通告したという。
台風前夜のことだった。壁の向こうから、かたかたとボトルを片付ける音が響いてきた。
「無理」と突っぱねていた人が、いま黙々と動いている。途中で音が止み、深いため息だけが伝わってきた。やがて、片付けの音は静かに消えた。
台風一過の朝、うちのベランダには何も落ちていなかった。隣のベランダも、見上げれば空っぽになっている。
廊下で顔を合わせた隣人は、気まずそうに視線を落とし、無言で部屋へ戻っていった。すっきりと晴れた空の下、もう拾うものは何もなかった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














