「おかずもご飯も、箱に次々と」ホテルの朝食で料理を詰めていた宿泊客。だが、スタッフが正論を伝えた結果
窓際の席で広げられていたもの
出張の朝、私はホテルの朝食会場で一日の予定を確認しながら食事をするのが習慣になっていました。
その日もトレーを手に席を探していると、窓際のテーブルに目が止まりました。
席の上には、行楽に持っていくような3段の弁当箱が広げられていたのです。
そこに座っていた人は料理の並ぶ台と席を何度か行き来し、皿ではなく弁当箱の中へ料理を移していました。
焼き魚、卵料理、そして白いご飯まで、箱の中へ次々と入っていきます。
近くの席から、小さな声が聞こえました。
「おかずもご飯も、箱に入れてるね…」
私も同じ光景を見ていました。
声をかけたほうがいいのだろうかと思いましたが、私はただの宿泊客です。ホテルごとの決まりも詳しく知りません。
知らない相手に直接注意して、朝からトラブルになるのも避けたい気持ちがありました。
周囲にも気づいている人はいるようでしたが、誰も声をかけません。
スタッフは料理の補充や食器の片付けで忙しそうに動き回っていました。
スタッフが足を止めた
私がコーヒーを取りに席を立ち、戻ってきたころでした。
食器を下げていた若いスタッフが窓際の席で足を止めました。
弁当箱に目を向けたあと、いったん持っていた食器を片付け、改めてその席へ向かいます。
「恐れ入ります。こちらのお食事は、会場内でお召し上がりいただいております」
大きな声ではありませんでした。
相手を責めるような言い方でもなく、近くにいる人にだけ聞こえる程度の声でした。
続けてスタッフは、「衛生面の都合もございますので、お持ち帰りはご遠慮いただいております」と静かに伝えました。
弁当箱を広げていた人はスタッフを見上げ、少し間を置いてから手を止めました。
何か言い返すことはありません。その後、新しく料理を箱へ入れることもありませんでした。
スタッフも必要以上にその場へ残らず、「恐れ入ります」と頭を下げて、再び仕事へ戻っていきました。
必要なことだけを伝える姿
近くの席にいた人たちも、しばらくすると普段どおり食事を再開しました。
注意すると聞くと、強い口調ではっきり言わなければならないように思うことがあります。
けれど、そのスタッフは相手を恥ずかしがらせることなく、ホテル側の決まりとして必要なことだけを伝えていました。
私にはできなかった対応を、ごく自然に仕事として行う姿が印象に残りました。
私も残っていた朝食を食べ終え、そのまま予定どおり仕事へ向かいました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














