「部屋のお風呂にしか入っていないんだぞ」大浴場を使わず宿泊料金の値引きを求めた男性。だが、責任者が伝えた正論
大浴場を使っていないのに同じ料金?
家族旅行を終える日の朝、私は夫と子どもたちと一緒に、ホテルのフロントでチェックアウトの順番を待っていました。
列の少し後ろでキャリーケースを足もとに寄せていると、カウンターから男性の不満そうな声が聞こえてきました。
会計をしていたのは、スーツ姿の40代くらいの男性。そのすぐ後ろには、連れの若い女性が立っていました。
カウンターの内側では、20代くらいの女性スタッフが宿泊料金の明細を説明しています。
「ちょっと待って。これ、大浴場に入った人と同じ料金なんですか?」
スタッフが「はい、宿泊料金は同じになります」と答えると、男性は眉をひそめました。
「いやいや、部屋のお風呂にしか入っていないんだぞ。それなのに同じ料金って、おかしいでしょう」
どうやら男性は、大浴場を利用しなかった分、宿泊料金を安くしてほしいようです。
スタッフは落ち着いて説明しようとしました。
「申し訳ございません。大浴場のご利用については…」
「だから、使ってないんですよ。だったら、その分は安くなるんじゃないの?」
男性はカウンターに手をつき、納得できない様子です。
連れの女性がそっと男性の背中に手を伸ばしかけましたが、男性は振り向きもしませんでした。
責任者が伝えた宿泊料金の仕組み
男性の声は次第に大きくなり、フロントに並ぶほかの客たちも様子をうかがい始めました。
「大浴場に入った人と、入ってない人が同じ値段って、どう考えても変でしょう」
連れの女性は顔を赤くしてうつむいています。
女性スタッフは何度か説明を試みましたが、男性は首を横に振るばかりでした。
そこへ、カウンターの奥から50代くらいの男性が出てきました。女性スタッフの隣に立ち、客に一礼します。
「責任者です。お待たせして申し訳ございません。私からご説明してもよろしいでしょうか」
「だから、大浴場を使ってないんです。使った人と同じ料金なのは納得できませんよ」
責任者はうなずいてから、ゆっくりと話し始めました。
「おっしゃることは分かります。ただ、大浴場はご宿泊のお客様にご利用いただける設備のひとつなんです」
「……それで?」
「大浴場の利用料金を別にいただいているわけではありませんので、ご利用にならなかった場合も、宿泊料金は変わらないんです」
男性は一瞬、言葉に詰まったようでした。
「じゃあ、大浴場を使わなくても安くはならないってことですか?」
「はい。申し訳ございませんが、ご予約いただいた宿泊料金でのご案内になります」
責任者は声を荒らげることなく、最後まで丁寧に説明しました。
男性はもう一度明細に目を落としましたが、それ以上は言い返しませんでした。
連れの女性がそっと袖を引くと、男性は内ポケットから財布を取り出し、黙って宿泊料金を支払いました。
そして足早にロビーを出ていきました。
女性はスタッフに小さく頭を下げ、そのあとを追います。
ようやく列が動き出し、私たちの番になりました。
「大変お待たせいたしました」
女性スタッフは、少しほっとしたような表情を浮かべていました。
私のうしろでは、子どもたちが帰りの電車の話を楽しそうに始めています。
利用しなかった設備の分まで払っているように感じた男性の気持ちも、少しは分かります。
ただ、料金の仕組みを最後まで聞かずに怒ってしまうと、話し合いも難しくなるのだと感じた出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














