「どれ、じいちゃんが預かっておいてやる」孫のお年玉に手を伸ばした父。だが、私の出した通帳を見て黙ったワケ
孫のお年玉に伸びた父の手
今年の正月、小学生の息子を連れて実家に帰りました。
昼過ぎまで親戚がにぎやかに集まり、息子はおじやおばからお年玉をもらうたび、うれしそうに喜んでいました。
親戚が帰ったあと、息子は居間で私の隣に座り、もらった袋を座卓に並べ始めました。
何を買おうかと、指を折りながら考えています。
その姿を見て、私は自分の子ども時代を思い出しました。
私も正月のお年玉が楽しみでした。
ところが、もらった袋は毎年、父にすべて取り上げられていたのです。
「お前に持たせたら、すぐ無駄づかいするだろう」
「でも、僕がもらったお金だよ」
そう言って返してほしいと頼んでも、父は聞いてくれませんでした。
結局、あのお金がどこへ消えたのか、今も分かりません。
そんなことを思い出していると、座卓の向かいに座っていた父が、息子のお年玉をじっと見ていました。
「おいおい、ずいぶんもらったな。子どもには大金じゃないか」
父は湯のみを置くと、息子のほうへ身を乗り出しました。
「どれ、じいちゃんが預かっておいてやる」
そう言って、お年玉の袋に手を伸ばしたのです。
父が黙って引っこめた手
息子は驚いたように袋を胸に抱え、困った顔で私を見ました。
それを見た父は、少し不機嫌そうな声になりました。
「なんだ、じいちゃんに渡せないのか?」
息子が黙っていると、父はさらに続けました。
「子どもの金は、大人が預かるのが当たり前だろう。お前のときだって、俺が預かってたじゃないか」
その言葉を聞いて、昔の悔しさがよみがえりました。
預かると言いながら、私には一度も返してくれなかった父。その父が今度は息子のお年玉まで持っていこうとしているのです。
私はかばんから、息子の名前が入った通帳を取り出しました。そして、父の前に置きました。
「知ってる。だからこの子には通帳を作った」
父は伸ばしかけていた手を止めました。
「……なんだ、それ」
「この子のお年玉を入れる通帳だよ。帰ってから、一緒に預けに行くつもりだから」
父は通帳を見つめたまま、黙っていました。
私は息子のほうを見てから、もう一度父に向き直りました。
「父さんに預けた俺のお年玉、結局どうなったか分からないままだろ。だから、この子のお金はちゃんと残しておきたいんだ」
父は何か言いかけましたが、結局何も言いませんでした。
そのとき、台所で洗い物をしていた母が、手をふきながら顔をのぞかせました。
「そうね。そのほうがいいわ」
母の言葉を聞くと、父は黙って手を引っこめました。そして座り直し、テレビのほうへ顔を向けてしまいました。
息子はほっとしたように息をつくと、私にお年玉の袋を差し出しました。
「パパ、これ、ぼくの通帳に入れるの?」
「そうだよ。使い道は自分で決めていいんだ」
「うん!」
息子はうれしそうに、袋を通帳の横に並べました。
父は相変わらずテレビを見たままです。
けれど私は、安心した顔でお年玉を並べ直す息子を見て、ようやく胸のつかえが取れたような気がしました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














