「希望は二十歳の子で」婚活パーティーの会場で物色を始めた男性→身なりを整えて再来した日に背筋が凍った
参加女性の視線が一斉に逸れた瞬間
婚活パーティーの会場には、参加者一人ひとりの空気が露骨に出る。私はその空気を読み取るのが仕事だ。
お見合いの仲介と婚活パーティーの主催手伝いを長く続けてきた。
あの日も、いつも通り受付に立っていた。
窓の外は雲ひとつない晴天。だが入口から響いてきたのは、舗装された床を打つゴム長靴の鈍い音だった。
現れたのは40代半ばの男性。汚れたジャンパー、毛玉だらけのズボン、そして長靴。書類記入のペンを持つ手にも、爪の隙間に黒い汚れが残っていた。
「希望は二十歳の子で」
記入欄を見せてきた彼に、私は無言でうなずく以外なかった。
本人の年齢は45歳。会場に入った彼は、席に着くなり首を回して女性陣を順番にじろじろと見回していった。
視線を浴びた女性たちは、ほぼ全員が同じ反応をした。
一瞬目を合わせ、すっと逸らし、隣の参加者と気まずそうに小声を交わす。
フリータイムでも誰も近づこうとしない。同業の主催者によれば、地元では複数の会場で同じ振る舞いを繰り返しており、すでに知れ渡っているらしかった。
マッチングシートに並んだ最年少の名前
それから数か月後のある回。
受付に立っていた私は、入ってきた男性を二度見した。整えられた短髪、ノリの効いたシャツ、革靴。あのときと別人のような出で立ちで、彼は受付の前に立っていた。
「今日はよろしくお願いします」
声だけが、あの日と同じだった。私は震える手で名簿に丸をつける。会場での彼は別人だった。話し方も穏やかで、相手の話に相づちも打つ。女性陣はあの日の長靴姿を知らない。彼を初対面の45歳として受け止めていた。
そして集計の時間。提出されたマッチングシートの上で、彼の名前の横に並んだのは、その日の参加女性の中で最年少、20代前半の女性の名前だった。希望していた条件にぴたりと当てはまる相手だった。
カップルが成立した二人が手続きに来たとき、私は会場の隅で進行表を握りしめていた。彼女は今日初めて彼を見ている。長靴も、毛玉だらけのズボンも、爪の汚れも、地元での評判も、何ひとつ知らない。
会場を出ていく二人を見送りながら、私の中に冷たいものが広がった。あの姿を見たら、彼女は今日の一歩を踏み出していただろうか。
受付の椅子に腰を下ろし、しばらく立ち上がれなかった。手元の進行表に書かれた彼の名前と、その隣に並んだ20代の彼女の名前。何度見直しても、活字の上では何の違和感もなかった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














