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2026.05.29(Fri)

「あなたの好物知っているのよ」一度も話していない好物を覚えていた義母。気を使いすぎた私が抱えたジレンマ

「あなたの好物知っているのよ」一度も話していない好物を覚えていた義母。気を使いすぎた私が抱えたジレンマ

玄関先で差し出された見送りの言葉

義実家で過ごす数時間は、私にとって肩がずっと固い時間です。

義母は穏やかな人で、声を荒げることも露骨に何かを言ってくることもありません。

それでも一緒の空間にいると、言葉選びや座り方ひとつまで気を張ってしまい、帰宅する頃にはぐったりしているのが常でした。

その日も帰り際、玄関のたたきで靴を履いていた時のことです。

普段は廊下の途中で軽く頭を下げて見送る義母が、なぜかその日は玄関まで降りてきました。

私は反射的に背筋を伸ばし、何か粗相があったのかと一瞬身構えたのです。

けれど義母は、視線をふわりと和らげてこう言いました。

「ゆっくりしていってね」

もう帰ろうとしている私への言葉としては、少し場面が遅い気もしました。

けれど口調は柔らかく、いつもとは違う笑みが浮かんでいたのです。

優しさに身構えてしまう自分

私は咄嗟にお礼を返しました。

けれど胸の奥はざわざわと落ち着かないのです。少し前、リビングで季節の話をしていた時にも、義母はふいに冷蔵庫から皮を剥いた果物を持ってきて、私の前に差し出していました。

一度も義実家で口にしたことのない好物だったのです。視線を上げると、義母は穏やかな声でこう続けました。

「あなたの好物知っているのよ」

夫から聞いたのか、いつから覚えていたのか、頭の中で問いが回りました。

普段は最低限の挨拶しか交わさない人が、ふいに距離を縮めてきた瞬間、私は喜びよりも先に警戒する癖がついていたのです。

(何か、含みがあるのかな。それとも、純粋な見送りなのかな)

義母の表情は柔らかいのに、目の奥は普段と同じ落ち着いた温度を保っていました。

意地悪な物言いは一度もされていません。それでも、本心が見えない人から放たれる優しい一言が、私には何より重いのです。

夫の運転する車に乗り込み、ドアを閉めた瞬間に長く息を吐きました。

隣の夫に「お母さん、今日いつもより優しかったね」と声をかけても、夫はただ「そう?」と短く返すだけでした。

仲良くしている分には、好きになれる人だと思います。怒鳴られた記憶も、嫌味を投げられた記憶もありません。

それなのに、本心が読めない相手の優しさを向けられた瞬間、私は背筋が凍るのです。家に着いてからも胸の奥は静まらず、その日の予定が手につきませんでした。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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