「最前列、譲るね」イベントのチケットを譲ってくれるはずだった。だが、イベント前日に届いた最悪な知らせとは
前日23時に届いた一行
ミュージカル俳優のイベントが近づいていた頃、ファン仲間の知り合いから友人経由で連絡が来た。最前列のチケットがあるので譲る、という話だった。すでに別の席は確保していたが、最前列なら交換してでも行きたい。
そう伝えて、友人に仲介を頼みながらやりとりを始めた。
「最前列、譲るね」
もらった言葉が、頭の中で何度も繰り返された。一気にテンションが上がった。
ところが、知人の返信は途中から滞り始めた。「席の確認が取れてから改めて」と言われたきり、それっきり既読がついても返事は来ない。
一週間前を切っても音沙汰がないまま、前日の夜になった。さすがに確認しないとまずい。そう思って、夜遅くにメッセージを送った。
23時すぎ、ようやく一行だけ返信が届いた。
「ほかの子に渡すからナシで」
説明も謝罪もなかった。約束のような言葉が、一晩でこんなにあっさり消えるのかと、しばらく画面を見つめたまま動けなかった。
友人にも報告したが「私もびっくりした」と返ってきただけで、話はそこで止まった。
最前列に座ってた女が嫌いなアイツだった
当日は別の席で観ることにした。気持ちを切り替えようとしたが、会場に入った瞬間から落ち着かなかった。
開演前、最前列にふと視線が向いた。そこに座っていたのは、以前からなんとなく距離を置いていた同じ俳優のファンだった。
会えば挨拶程度、表向きはにこやかでも、内心ではあまり関わりたくない相手。自分より優先された相手が、まさにこの女だったとは。
「ほかの子」とは、この女のことだったのか。
頭の中でひとり言を呟いた。
ステージの上に好きな俳優が立っているのに、視線が最前列のあの後ろ姿に何度も吸い寄せられた。前日まで黙っていた理由も、一言の謝罪もないまま終わったことが、ただ腑に落ちなかった。公演が終わっても、あの夜の一行だけが胸に残っていた。
帰りの電車に揺られながら、何度もスマートフォンの画面を開いてはあのメッセージを読み返した。
たぶん向こうにとっては、それほど重い言葉ではなかったのだろう。それでも自分にとっては、しばらく忘れられない夜になった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














