施設長「何か手伝おうか?」手芸サイトを閉じて顔を赤らめた上司→繁忙のピークに初めて聞いた一言
施設長が「見ていた」もの
介護福祉施設で事務を担当して、長くなります。
施設長は仕事のできる人で、利用者へのケア方針から行政との手続きまで、施設に関わる全てを把握しています。スタッフ間のトラブルが起きたときも、的確に動いて解決する。そのやり手ぶりは本当に尊敬していました。
ただ、月に一度だけ、私にとって苦い気持ちになる日があります。
毎月決まった繁忙日。請求処理、給付管理、スタッフの勤怠集計が一気に押し寄せるその日は、昼休みも削って書類の山と格闘します。
介護の現場は人手不足が続いており、フロアのスタッフはケアに追われています。その日に限っては、事務側も余裕がありません。気を抜くと締め切りに間に合わなくなる。そんな日が月に何日かあるのです。
そういう日に、施設長は自分のデスクで難しい顔をしてパソコンを見ていました。眉間にしわを寄せ、何か重要な仕事をこなしているように見えます。
手伝ってほしいとは言えない雰囲気でした。声をかけても「うん、うん」と生返事が返ってくるだけで、席を立つことはありません。
(今日も残業か)と思いながら、私は書類を処理し続けていました。
背後から覗き込んだ画面と、初めての申し出
その日も繁忙のピークでした。
施設長は相変わらず難しい顔でパソコンに向かっています。何にそんなに時間をかけているのだろうと、ふと気になりました。
席を立ち、さりげなく背後へ回ります。
覗き込んだ画面には、手芸や手作り作品の写真が並んだサイトが広がっていました。
迷わず声を出しました。
「施設長、何見てるんですか?」
事務所内に響くほどはっきりと言うと、施設長はびくっと肩を揺らし、あわてて画面を閉じます。振り返った顔は、みるみる赤くなっていきました。
そして、施設長はこう言いました。
「何か手伝おうか?」
働き始めてから一度も聞いたことのなかった言葉でした。その一言が出た瞬間、事務所の空気が少し変わったような気がしました。
私はうなずきながら、すっと気持ちが軽くなっていくのを感じました。声を上げただけで、長年飲み込んでいたものが、きれいに払われた瞬間でした。
その日は定時に近い時間で仕事を終えることができました。施設長の口から「手伝う」という言葉が出るのを待ち続けていたわけではなかったけれど、出てしまえばこんなに楽になれるものなのかと、帰り道でひとりあきれるような、清々しいような気持ちになりました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














