妻「やり方が雑なのよ」→「もういい、出ていく」と家出した夫。だが、車で時間を潰していた夫の前に現れた
気を遣っているつもりでも
休みの日は、夫婦そろって家事を分担する。それが、長年のうちのやり方だ。
ところが女房は、少しでも気に食わないと、細かいことまでいちいち言ってくる。
「やり方が雑なのよ」
その日も、朝から指摘の連続だった。掃除のかけ方、洗い物の置き方、洗濯物の干し方。どれをやっても、何かしら口を挟まれる。
こっちだって、それなりに気を遣ってやっているつもりだ。それなのに、認める言葉は一つもない。
「そんなに言うなら、自分でやればいいだろ」
「だから、ちゃんとやってって言ってるの」
そのやり取りで、こらえていたものが切れた。
「もういい、出ていく」
「ちょっと、待ちなさいよ」
引き止める声を背中で聞きながら、車に乗り込んだ。二度と帰るものか。そう本気で思っていた。
行く当てのない家出
勢いで飛び出したはいいが、向かう先などない。それでも家には戻りたくなくて、ひたすら車を走らせた。
昼飯も、夜飯も、外で済ませた。昼間はあてもなく郊外の道を流し、店の駐車場で時間をつぶす。夜はファミレスで一人、黙々と箸を動かした。意地だけが、腹の中でくすぶっていた。
「こっちは、ちゃんとやってるつもりなんだよ」
言い訳の相手は、誰もいない助手席だ。それでも一日中、不貞腐れていた。
夜が更けて、いよいよ行き場がなくなった。
気づけば、家の近くまで戻ってきている。路肩に車を停め、シートにもたれて、ぼんやり外を眺めた。
意地を張ったところで、結局このざまだ。情けなさが、じわじわとこみ上げてくる。
すると、運転席の窓を、誰かがコンコンと叩いた。
妻が折れた夜
振り向くと、女房が外に立っていた。家のまわりを、探し歩いていたらしい。
窓を開けると、女房は気まずそうに目を伏せ、ぼそぼそと言った。
「あなた……ご飯、まだなんでしょ」
朝のとげとげしさは、もうどこにもない。言葉を選びかねて、何度も言い淀んでいる。
「もう食ってきた」
そっけなく返すと、女房はさらに小さくなった。
「……今日は、私も言いすぎたかもしれない。ごめんなさいね」
あれだけ威勢のよかった女房が、自分から頭を下げてきた。これには、すっかり拍子抜けしてしまった。意地を張って一日うろついた自分が、急にこっけいに思えてくる。
「仕方ないな」
口ではそうこぼしながら、苦笑いがこぼれた。
家に入ってからも、女房はやけに低姿勢で、あれこれ気を遣ってくる。その様子を見ていたら、怒っているのがすっかりばからしくなった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














