「ゴールはあっちだよ」運動会でゴールとは違う方向へ走り出した子供。だが、追いかけた先生が見た子供の表情とは
保護者席のいちばん後ろから
幼稚園の運動会で、今でもよく覚えている場面があります。
それは、自分の子どもの出番ではありませんでした。
年少クラスのかけっこが始まり、私は保護者席の後ろのほうから園庭を見ていました。
4人ずつスタートラインに並びます。先生に手を引かれて位置につく子もいれば、隣の子の顔を見て笑っている子もいました。
まだ年少です。まっすぐ並んでいるだけでも、どこか微笑ましく見えます。
「次の子たち、走りますよ」
近くにいた保護者がそう言って、スマートフォンを構えました。
ゴールとは違う方向へ
先生の合図で、4人が一斉に走り出しました。
3人は目の前のゴールへ向かいます。
ところが、残った1人だけが途中でくるりと向きを変えました。
そのまま、園庭の端に向かって走り出したのです。
「あれ、そっちじゃないよ」
保護者席から笑い声がこぼれます。
先生もすぐに気づきました。
「こっちこっちー」
声をかけながら、その子のあとを追いかけます。
けれど本人は止まりません。腕を大きく振りながら、楽しそうに走っています。
競争をしているというより、広い園庭を走れることそのものが嬉しいようでした。
最後まで笑っていた顔
先生が追いついたのは、園庭の端まで行く少し手前でした。
肩にそっと手を添えられると、その子はようやく足を止めます。
怒られたと思ったのかと思いましたが、こちらを向いた顔はまったく違いました。
口を大きく開けて、笑っていたのです。
先生も笑いながら、その子と手をつなぎました。
「ゴールはあっちだよ」
指さされた先には、すでに走り終えた3人の子どもたちが待っています。
その子は先生と一緒に、今度はゴールへ向かって走り出しました。
先に着いていた子たちも、こちらを見ながら手を振っています。
ゴールすると、保護者席から自然と拍手が起こりました。
本人は何が起きたのか分かっていない様子で、それでも最後まで楽しそうに笑っています。
近くにいた父親が、スマートフォンを下ろしながら言いました。
「あんなに楽しそうに走れるの、いいですね」
隣の人も笑ってうなずいていました。
順位も、コースを間違えたことも、本人にはあまり関係なかったのかもしれません。
ただ夢中で走って、先生と一緒にゴールする。
年少らしいその姿が、運動会が終わったあとまで不思議と心に残りました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














