「卵焼きくらいならできるから」初めて妻の実家を訪れた私。だが、食卓に並んだ一品に驚いた理由
初めて訪れた妻の実家
結婚の挨拶をするため、初めて妻の実家を訪れた日のことです。
玄関に入ったときから緊張していました。何を聞かれるだろう、失礼なことを言わないようにしないと。そんなことばかり考えながら居間に通されました。
「そんなに固くならなくていいよ」
妻の父はそう言って笑いましたが、私はなかなか肩の力を抜けませんでした。
しばらくして、妻の母が料理を運んできました。煮物や焼き魚、汁物などが並び、最後に卵焼きが置かれます。
「たくさん食べてね」
そう勧められ、私はようやく箸を取りました。
いつか話した好み
卵焼きを一口食べて、少し驚きました。
甘くない、だしのきいた卵焼きだったからです。
私は昔から甘い卵焼きがあまり得意ではありません。とはいえ、妻の両親にその話をした覚えはありませんでした。
「これ、おいしいです」
そう言うと、妻が隣で笑いました。
「それ、お父さんが作ったんだよ」
思わず妻の父を見ると、少し照れたようにお茶を飲んでいました。
「前に、甘くない卵焼きが好きだって言ってたでしょ。私がお父さんに話したことがあったの」
妻に言われて、ようやく思い出しました。何か月か前、夕飯の話をしているときに、実家の卵焼きは甘くなかったという話をしたことがあります。
どうやら妻が、その何気ない話を両親にしたようでした。
「料理はほとんど母さん任せなんだけど、卵焼きくらいならできるから」
妻の父はそれだけ言って、また箸を動かしました。
大げさなことを言われたわけではありません。それでも、まだほとんど話したことのない私の好みに合わせて、わざわざ作ってくれたことがうれしく感じました。
帰り道で聞いたこと
食事が終わるころには、最初の緊張もかなり薄れていました。
帰り際、妻の母が玄関で言いました。
「また気軽に来てね。今度はそんなに緊張しないで」
妻の父も、「次は普通に飯を食べに来ればいいから」と笑います。
家を出て少し歩いたところで、妻が振り返りました。
「お父さん、昨日も卵焼き作って練習してたんだよ」
「そこまでしてくれたの?」
「失敗したら嫌だからって」
私は思わず笑ってしまいました。
豪華な料理よりも、あの一皿の卵焼きのことを今でもよく覚えています。
家族になるというのは、大げさな言葉を交わすことではなく、こういう小さな気遣いが少しずつ重なっていくことなのかもしれない。帰り道、そんなことを考えていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














