「うちの子だけを撮っているんですけど」撮影禁止と案内されていた授業参観でスマホを構え続けた保護者。だが、先生が正論をぶつけた結果
撮影禁止と案内されていた授業参観
息子が小学三年生だった頃、六月の土曜日に授業参観がありました。
参観するのは、午前中の国語の授業です。保護者は教室の後ろか、廊下側の窓越しに授業を見ることになっていました。
事前に学校から配られた案内には、授業中の写真や動画の撮影は控えるよう書かれていました。
ほかの児童が写り込む可能性があることや、子どもたちが授業に集中できなくなることが理由です。
当日も、昇降口と各教室の入口に同じ内容の掲示が出ていました。
授業が始まる少し前、私は教室後方の壁際に立ちました。
保護者は十人ほど集まっていましたが、皆、静かに子どもたちの様子を見守っています。
ところが授業が始まって十分ほどした頃、私の少し前に立っていた男性が、ポケットからスマートフォンを取り出しました。
男性はスマートフォンを横向きに持ち、教室の前方にいる自分の子どもへ向けています。
画面を見ながらゆっくり端末を動かしていたため、動画を撮っているように見えました。
隣にいた女性が、小さな声で尋ねます。
「ちゃんと撮れてる?」
男性はうなずき、そのまま撮影を続けました。
大きな音を立てていたわけではありません。しかし、後ろの席に座っていた子どもがスマートフォンに気づき、何度か振り返っています。
近くにいたほかの保護者も気づいたようでしたが、知り合いではない相手に直接注意するのはためらわれるのか、誰も声をかけませんでした。
一度しまったスマートフォンを再び取り出して
授業の途中、担任の先生も撮影に気づいたようでした。
文章を音読する活動が終わったところで、先生は教室全体に向けて声をかけました。
「保護者の皆さま、事前のご案内にもありますが、授業中の撮影はご遠慮ください」
特定の人を名指しする言い方ではありませんでした。
男性は周囲を見回したあと、スマートフォンをいったんポケットへ戻しました。授業もそのまま続きます。
ところが、それから五分ほどすると、男性は再びスマートフォンを取り出しました。
今度は胸のあたりに構え、目立たないように撮影しようとしているようでした。
先生は子どもたちに漢字の書き取りを始めるよう指示すると、机の間を回りながら教室の後方へ来ました。
そして男性のそばで立ち止まり、周囲に響かない程度の声で伝えました。
「申し訳ありませんが、スマートフォンをしまっていただけますか」
男性は少し困ったような表情を浮かべました。
「うちの子だけを撮っているんですけど」
先生は落ち着いた口調で答えます。
「お子さんだけを撮っているつもりでも、ほかのお子さんの顔や声が入る可能性があります。それに、撮影していることに気づいて、後ろを向いてしまう子もいますので」
男性は教室を見渡しました。ちょうど近くの席の子どもが、こちらを気にするように振り返っていました。
「分かりました。すみません」
今度は男性も言い返さず、スマートフォンをかばんの中へしまいました。
先生は小さく頭を下げると、すぐに子どもたちの机を回る仕事へ戻っていきました。
その後は撮影する人もおらず、授業は予定どおり進みました。男性も授業の終わりまで、静かに自分の子どもの様子を見ていました。
子どもの学校での姿を残したいと思う気持ちは、私にも分かります。ただ、教室には自分の子ども以外にも多くの児童がいます。
大勢の前で強く叱るのではなく、最初は全体へ呼びかけ、それでも続いたときに個別に理由を説明した先生の対応が印象に残った授業参観でした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














