「家族なんだから1万円ずつでいいだろ」年末の親族の席で叔父が決めた法事代。祖母が帳面を見せて伝えたこと
行けるか分からないと伝えた私に、重ねられた言葉
3年ほど前の年末のことです。
祖母の家には、いとこや叔父、叔母が集まっていました。
私は仕事帰りに少し顔を出しただけで、上着もひざの上に置いたまま座っていました。
ストーブの前にいた叔父が、ふと思い出したように言いました。
「そうだ。来年の法事だけど、お金はみんな1万円ずつでいいよな」
そこで私は、法事の日取りや費用について初めて具体的に聞きました。当時の私は勤務予定が月ごとに変わっていて、その日に休めるか分かりませんでした。
「私、その日行けるかまだ分からないんです。仕事の予定が出てなくて」
叔父は軽く笑いました。
「予定なんて関係ないよ。家族なんだから」
「でも、休みが取れなかったら参加できないので…」
「予定なんて関係ないって。来られなくても、お金だけ同じにしておけばいいだろ」
私は思わず聞き返しました。
「参加できなくても1万円ですか?」
「そうそう。だから、予定なんて関係ないよ。みんな一緒のほうが分かりやすいだろ」
叔父に悪気があるようには見えませんでした。親族なら同じように負担するのが公平だと、本気で思っているようでした。
ただ、向かいにいたいとこたちは黙ったままです。一人は手元のみかんをいじり、もう一人も視線を落としていました。
黙って聞いていた祖母が、口を開いた
そこへ、台所から湯のみを運んできた祖母が戻ってきました。叔父の前にお茶を置くと、静かに言いました。
「ちょっと待って。まだ私、そんなふうに決めてないよ」
叔父は少し驚いた顔をしました。
「でも母さん、みんな同じにしたほうが揉めないだろ?」
「来られる人も来られない人もいるんだから、先に金額だけ決めることないでしょう」
祖母はそう言うと、奥の部屋からひもで綴じた古い帳面を持ってきました。これまでの法事で、誰からいくら受け取ったのかを書き残しているものでした。
何ページかめくったあと、祖母は叔父を見ました。
「これまでの分も全部つけてあるけど、あなたから法事のお金を受け取った記録はないよ」
叔父の表情が少し固まりました。
祖母は責めるような口調にはならず、そのまま帳面を閉じました。
「だから今回だけ急に『みんな同じ』って決めるんじゃなくて、必要なお金が分かってから私がみんなに相談する。それでいいでしょう」
叔父は少し黙ったあと、
「……分かった。じゃあ母さんに任せるよ」
と答えました。
それで話は終わりました。向かいにいたいとこが、張っていた肩を少し下ろしたのが見えました。
帰りぎわ、門の外まで一緒に出たいとこが、私を見て小さく会釈しました。言葉はありませんでしたが、あの場で戸惑っていたのは私だけではなかったのだと思います。
親族だからといって、予定も事情も同じではありません。冷えた夜道を歩きながら、そんな当たり前のことを改めて考えた年末でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














