「あの子、お菓子で媚びてるよね」慕われていた先輩が漏らした本音。だが、本人に聞かれ絶句
裏表のない人だと思っていた
職場でいちばん慕われていたのは、にこやかなあの先輩だった。
誰にでも優しく、後輩の面倒見もいい。仕事で落ち込んでいると、決まって温かい言葉をかけてくれる。私も新人の頃から、ずっと憧れていた一人だった。
「焦らなくていいよ、少しずつでいいから」
その柔らかな声に、何度励まされたかわからない。
「差し入れ、みんなで食べてね」
隣の課の若い社員が、よくお菓子を配って回っていた。人見知りな彼女なりの、職場になじもうとする努力だった。先輩も、いつも笑顔で受け取っていた。
「気がきくね、ありがとう」
そんな二人のやり取りを、私は微笑ましく眺めていた。この人がいる限り、この職場に嫌な人なんていない。誰と話しても角が立たず、みんなが安心して頼れる存在だった。そう思い込んでいた。
給湯室で崩れた笑顔
ある昼下がり、給湯室の前を通りかかると、中から先輩の声がした。もう一人の先輩と、何か話し込んでいる。
「あの子、お菓子で媚びてるよね」
聞き慣れた優しい声が、そう吐き捨てた。先ほどお菓子を配っていた、あの若い社員のことだ。
「ああやって点数を稼いでるだけ。見え見えで白けるわ」
もう一人が同調すると、先輩の口はさらに滑らかになった。
「正直、この職場の人間はみんな苦手」
優しさの裏に隠していた本音が、次々とあふれ出す。私は、その場に凍りついた。
その時だった。給湯室の入り口に、当の若い社員が立っているのが見えた。空になった菓子の箱を手にしたまま、身動きひとつできずにいる。今の言葉を、最初から聞いてしまったのだ。
気配を察した先輩が振り向き、彼女と目が合う。にこやかだった顔から、一瞬で表情が消えた。
「あ……ちが……」
言葉にならない声を漏らしたきり、先輩は絶句した。取り繕う笑顔も浮かべられず、ただ立ち尽くすばかり。相づちを打っていた先輩も、青ざめて下を向いた。
「お菓子、もういりませんよね」
若い社員は静かにそう言って、箱を給湯室の隅に置き、去っていった。残された二人は、かける言葉も見つからないようだった。
同僚のひとりが、ぽつりとつぶやいた。
「あの笑顔、こわいね」
この出来事は、あっという間に職場へ伝わった。翌日から、先輩の周りからは潮が引くように人がいなくなった。
誰もが表向きは今まで通りに接しながら、心の中では一線を引いている。廊下で会っても、目を合わせようとしない。いちばん好かれていた人は、いちばん人から離れられる人になっていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














