「剃ったものが床に落ちている」電車の座席で突然ひげを剃り始めた男性。だが、女性が勇気をだして注意した結果
大きなかばんから聞こえた電子音
朝の電車で、私は長い座席に腰を下ろしていました。通路をはさんだ向かいには、大きなかばんを膝に載せた男性が座っています。
まだ眠そうな人も多く、車内は走行音が目立つくらい静かでした。
しばらくすると、向かいの男性がかばんを開き、小さなポーチを取り出しました。
次の瞬間、「ブーン」という電子音が聞こえてきました。
私は思わず顔を上げました。隣に座っていた年上の女性も、同じタイミングで向かいを見ています。
男性が手にしていたのは電気シェーバーでした。座席に座ったまま、あごのあたりに何度も当てています。
「え…ここで?」
隣の女性が、私にしか聞こえないくらいの声でつぶやきました。
私も驚きましたが、直接注意する勇気はありませんでした。
男性は周囲の視線には気づいていない様子で、ときどき手であごを払いながら剃り続けています。そのたびに、細かなものがズボンや床へ落ちているように見えました。
女性が迷いながら声をかけた
隣の女性は何度か男性のほうを見ていましたが、しばらくは何も言いませんでした。
ところが男性がもう一度ひざのあたりを手で払ったとき、女性が小さく息を吸いました。
「あの、すみません」
男性はシェーバーを動かしたまま顔を上げました。
「はい?」
女性は少し言いにくそうにしながら、通路の床を指しました。
「それ…剃ったものが床に落ちているみたいですよ」
男性は一瞬きょとんとして、それから自分のズボンと足元を見ました。
「あ…そうですね」
さっきまで動いていた手が止まります。
周囲を見回した男性は、ようやく何人かがこちらを見ていることにも気づいたようでした。
「すみません。朝、急いでて…ちょっとくらいなら大丈夫かと思ってました」
少し気まずそうにそう言うと、男性はシェーバーの電源を切りました。
女性も責めるような言い方はせず、「床に落ちちゃうと、ちょっと気になりますよね」とだけ返しました。
「そうですよね。すみませんでした」
男性は道具をポーチに戻し、かばんの中へしまいました。
静かになった車内で思ったこと
その後、男性が再びシェーバーを出すことはありませんでした。
注意した女性も、それ以上何かを言うことはなく、また静かに前を向いていました。
次の駅で降りるとき、私は女性に「声をかけるの、勇気がいりますよね」と言いました。
女性は少し困ったように笑いました。
「迷いましたよ。怒られたらどうしようって。でも、床に落ちてるのを見たら、そのままにもできなくて」
男性にも急いでいた事情はあったのでしょう。それでも、たくさんの人が使う車内では、周囲への配慮も必要です。
強く責めるのではなく、困っていることをそのまま伝えた女性の姿が、朝の電車を降りてからも心に残りました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














