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2026.09.10(Thu)

「職場にいざこざを持ち込まないで」乾杯の挨拶で夫婦の職場事情を持ち出した上司。思わぬ言葉に会場が静まった

「職場にいざこざを持ち込まないで」乾杯の挨拶で夫婦の職場事情を持ち出した上司。思わぬ言葉に会場が静まった

三分の挨拶で、同じ話が二度出た

いとこの結婚披露宴で、乾杯の音頭を取ったのは、新郎新婦の職場の上司だった。

二人は同じ会社で出会い、同じ部署で働いている。私は末席で、注がれたばかりのグラスを持っていた。

司会が名前を読み上げると、会場の後ろのほうから拍手が起きた。

上司はポケットから折りたたんだ紙を出したものの、ほとんど目を落とさないまま話し始めた。

最初は、ごく普通の挨拶だった。

「二人とも、本当によくやってくれています。忙しいときも助けてもらっていますよ」

少し間を置いて、上司は新婦のほうを見た。

「特に新婦はね、段取りが早いんです。こっちが言う前に、もう終わってることもあるくらいで」

新婦側の親族席から、小さな笑い声が聞こえた。ここまでは、和やかな雰囲気だった。

ところが、上司の表情が少しだけ変わった。

「ただね…一つだけ、二人にお願いしておきたいことがあるんです」

会場が静かになる。

「夫婦だから、そりゃいろいろあると思います。でも、その…家のことを職場まで持ってこられると、周りもどうしていいか分からなくなるんですよ」

少し笑いが起きるかと思ったが、ほとんど誰も笑わなかった。

上司は、その空気に気づいたのか気づかなかったのか、そのまま話を続けた。

「まあ、職場では仕事に集中してもらってね。夫婦のいざこざは、できれば家で解決してください。お願いしますよ」

それから仕事ぶりについてもう少し話し、締めくくりに入った。

「これから二人で仲良くやっていってください。あと……本当に、いざこざだけは職場に持ってこないでくださいね」

二度目だった。

「それでは、お二人の末永い幸せを願いまして……乾杯!」

「乾杯」

声は揃った。グラスの音も鳴った。

けれど、拍手はいつもの披露宴より短かった。私の前に座っていた男性は、グラスを持ったまま周りを見ていて、拍手をするタイミングを逃したようだった。

高砂の二人が、しばらく持ったままだったグラス

高砂を見ると、新郎新婦は乾杯をしたあとも、しばらくグラスを手にしたままだった。

新郎が新婦のほうを見る。新婦も笑顔は作っていたが、さっきまでより表情が硬く見えた。

隣に座っていたいとこの母が、小さく息を吐いた。

「…あれ、ここで言わなくてもよかったわよね」

私はグラスをテーブルに置いた。

「ですよね。ちょっとびっくりしました」

「会社で何かあったのかしらねえ」

「何かあったのかもしれませんけど……今日言う話じゃないですよね」

「そうよね。せっかくのお祝いなのにね」

いとこの母はそう言って、高砂を気にするようにもう一度見た。

上司は席に戻ると、隣の人から何か話しかけられていた。

怒っているようには見えなかった。あれだけ繰り返したのだから、職場で何か気になっていたことがあったのかもしれない。

ただ、それを聞いた新郎新婦がどう受け取ったのかは分からなかった。

近くにいた新婦の友人らしい二人も、顔を寄せていた。

「今の、ちょっときつかったね」

「うん……びっくりした」

それだけ言って、二人とも高砂のほうを見た。

しばらくして、司会が明るい声を出した。

「それではみなさま、お食事を楽しみながら、どうぞごゆっくりお過ごしください」

少しずつ会話が戻ってきた。

高砂では、新郎がようやくグラスをテーブルに置いた。新婦もそれに続いた。二人は顔を見合わせ、何か短く言葉を交わしていた。

職場では、本当に困ることがあったのかもしれない。

それでも私は今でも、あの乾杯の挨拶を思い出すたびに、「言うなら、今日じゃなかったよな」と思ってしまう。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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